稀勢の里、誰がために戦う
恒例ではございますが、夏場所序盤戦を振り返ってみたいと思います。
録り溜めしていた深夜場所をダーっと観てようやく追いついた所です。
贔屓としては稀勢の里から語るほかありませんね。まー、そういうタイトルです。A^^;
左の故障箇所は半分も回復していないと診ております。
2日目の隠岐の海戦で左おっつけを見せるも威力を感じませんでしたし、これと6日目の大栄翔戦で見せた左差しも返しが効いていない棒差しでした。
が、それは想定の範囲内。それよりも、巡業を全休し、場所の前週になってようやく幕内下位と稽古できるようになったと聞いてましたので、相撲勘や勝負勘の方を心配しておりました。
その心配は当たっている様子で、引きが墓穴となった4日目の遠藤戦などはその典型でありましょう。3日目の千代の国戦や、5日目の千代翔馬戦のように、相手力士の攻めを凌いで凌いで凌ぎまくっているうちに相撲勘が戻りさえすれば、足腰は万全であるように見えますので、終盤戦のキーマンと化すくらいのことは可能かもしれません。
とは言えども、6日目まで稀勢の里の相撲を観た限りでは、全勝の日馬富士と白鵬に対して早くも2差という星勘定を抜きにしても、どこまで本気なのか?と疑問に思いつつも耳に入る「3場所連続優勝」の可能性は万に一つも感じない相撲内容であります。
そうなりますと、稀勢の里は何をモチベーションにして土俵に上がるのか?という疑問が湧いてきます。
まー、当人に聞いたところで「土俵に上がれるから土俵に上がる」というような答しか返らないでしょうけれども、横綱の名に相応しい相撲は示せないし、満員の観客からの声援や土俵を3周するほどの懸賞幕の数に込められた期待に対し、The稀勢の里と言えるような相撲で応えることが出来ない現状なのですから、それとは別のところにモチベーションがあるからこそ今場所の懸命な相撲が成立していると思うのです。
稀勢の里は誰がために戦うのか。
それはやはり弟弟子の高安のためにではないかと。
今場所で10勝以上の成績を挙げると「三役で3場所33勝」という大関昇進ラインを超える高安。場所前の稽古内容や序盤の相撲っぷりから、今場所で大関昇進を果たすことはほぼ確実と言ってよろしいかと思います。
もしそうなれば、高安が稀勢の里の土俵入りで太刀持ちを務めるのは今場所限りということになります。現在の田子ノ浦部屋は稀勢の里と高安の他に幕内力士がいないため、同部屋力士に太刀持ちや露払いを託すのも今場所限り。
今場所の土俵入りには万感の思いが込められているでしょうし、土俵入りを介しての闘魂伝承もまた、稀勢の里のモチベーションの1つになっているのではないかと勝手に思ってます。
さらには、高安は優勝を目標に掲げてます。
これには、10勝という大関昇進にしては低めのハードルに気持ちを緩めることなく今場所に臨むため、あえて高い目標を設定したという側面もあるのでしょうが、高安にはそれを目標に掲げられるだけの力量が既にあり、それは稀勢の里も認めるところです。
となれば「オレが高安優勝の援護射撃をしてやろう」というのも、稀勢の里の大きなモチベーションの1つでしょう。
6日目まで終えた時点で全勝は日馬富士と白鵬の2人。
稀勢の里が両雄と対戦するのは14日目と千秋楽になりますから、前述したように終盤戦のキーマンと化す可能性が高いのです。
この両雄と戦うまでの大関戦も含む13番は無理をせず故障と相撲勘の回復に務め、14日目の白鵬戦からあの分厚いサポーターとテーピングが消える。なーんていう絵が見えると面白いのですが…さて。
というわけで、稀勢の里は高安がために戦う
そう思うと今場所の相撲を観る際のこちらのテンションも上がりますので、真実はどうあれ、そう思うことにします。A^^;
さて、ようやく他の力士評ですよ。A^^;
高安は序盤戦を地力勝ち。立合でバーンとかっぱじく(かち上げで弾く)と相手力士は皆腰が砕けて相撲になりません。これはもう大関ですよ。昇進しない理由が見つかりません。
ただ、御嶽海戦と玉鷲戦は別でしたね。
とくに6日目の玉鷲の相撲は見事で、高安の右かち上げを左おっつけで無効化し、立合の威力を半減させての電車道押し出し。これはもう玉鷲を褒めるしかないわけですけど、この技芸を他の力士が出来るかと言えば、玉鷲の突進力ありきの技芸なので横綱や大関も含めてそうは出来ないわけでして、高安の大関昇進は揺らぎません。
日馬富士が久し振りに日馬富士らしい日馬富士で、やー、嬉しい限り。
千秋楽が楽しみになるように、少しでも良いから稀勢の里が回復してくれることを祈ってます。
で、5日目の大栄翔戦で、日馬富士は「アタマで当たって右で肩を突きつつ左に廻って上手を取るや出し投げ」という相撲を取ったわけですが、これを注文相撲であるかのように実況が述べるのですよ。いかが思います?
私としては、これを注文相撲とするのは日馬富士に失礼だと思ってます。
ただ、日馬富士の神速と大栄翔のスピード不足(先に立ってるのに先に当たられてる)によってあっけない相撲になっただけで、実際は
1)アタマでガツンと当たって相手の出足を止める
2)右の突き手を支点にして左に廻る
3)上手を取る
4)出し投げを打つ
これだけのプロセスを経ている日馬富士の見事な武芸でありますよ。
それを解説することなく、あっけない勝負に不満を醸し出している場内の空気におもねり、注文相撲であるかのような言を述べる実況には大いに不満を覚えました。
白鵬もまた久し振りに白鵬らしい白鵬ですね。あ、黒い方の白鵬ね。
例えば5日目の御嶽海戦。
御嶽海を左上手投げで振り出してから右で御嶽海の顔を押さえて一緒に溜まりに落ち、なおも顔を押さえつける…といったあたりにヒール感が否めないのですよ。
6日目の遠藤戦も、突き放しに終始するという取口は遠藤にも観客にも意外であり、それが効を奏しての勝利であり、その選択は白星を1つ積むという意味では大正解であろうけれども、平幕の遠藤が、四つ相撲の神様的な白鵬が突き押しという奇手を用いるほどの力士かといえば疑問なのですよね。
文頭で稀勢の里のモチベーションを探りましたが、この大横綱は何をモチベーションにして土俵に上がっているのでしょうね? やー、応援しづらいです。
照ノ富士と豪栄道が相撲を取り戻しつつありますけれども、両大関については中盤戦で判断したい。
照ノ富士はヒザの故障との折り合い。豪栄道は自身の相撲の確立。序盤戦では分かりませんでした。とくに豪栄道の5日目と6日目の相撲は秀逸で、期待するなと言う方が無理です。
ほか、雑多に。
鶴竜の休場は仕方ないですね。
でも痛みの原因が足首の遊離軟骨(通称・ねずみ)であることが分かったのは良かったのではないでしょうか。ねずみなら対処方法はハッキリしてます。
御嶽海は良い動きに良い相撲、そして見事な寄りを見せて善戦してますが、関脇以上を食うところまで行きませんね。上位陣のリトマス試験紙的な存在になってます。その意味では本日の稀勢の里戦は注目です。
新入幕の豊山が初日に幕内初勝利を挙げたものの、2日目から連敗が途切れずに大苦戦してます。幕下付出しから負け越し知らずで入幕しましたが、大きな壁に当たったというところでしょう。初日、あの重い魁聖に見せた上手芸に期待してます。
幕内に復帰した豊響がらしくない相撲の毎日で星が上がりません。
サポーターの類は外れているので、十両優勝した先場所より体調面では良いハズなのですが…。
魁聖も西の幕尻で五分の星と苦戦してます。こちらはヒザの故障との戦い。8-7で良いから勝ち越してほしい。
以上、夏場所序盤戦の振り返りでした。
仕事が忙しくて相撲をゆっくり観る時間の無かった序盤でしたが、今日からリアルタイムに追っていけたらと思ってます。
では、中盤戦以降も夏場所を楽しみましょう。
日馬富士の
>>「アタマで当たって右で肩を突きつつ左に廻って上手を取るや出し投げ」
って、彼の必殺技で、白鵬からも何度も白星を奪っているんですが、いまだに「注文相撲」としか認識されてないのか。日馬富士のスピードがなければ不可能な技なのに。ただ不思議なのは、大栄翔相手にこの必殺技を出す必要があるのか、ということです。
白鵬は相撲に余裕がなくなった。ケガの影響なのか力が落ちてきたのか。
場所前の相撲のニュースは、稽古総見で稀勢の里休場のドタバタと「北斗の拳」の化粧まわしで埋め尽くされた。そりゃ稀勢の里、休場できないですわ。「スケールの大きい贔屓の引き倒し」ですね。
左肩左腕、力士の致命傷ではなかったようで安心したんですが、現役ただ一人の日本人横綱、千秋楽まで頑張ってほしい。
shin2さん、コメントありがとうございます。遅レスですいません。
日馬富士の必殺技を大栄翔に繰り出す必要はあるのか?ですけど、おそらくは余裕が無いのでしょうね。白星は積み重ねてはいるものの、足首の故障は抱えたままなのでしょう。
白鵬については心理面で余裕がないのでは?と思ってます。
稀勢の里は休場してしまいました。可能な限りの善処の結果ではありますが、残念なことです。