ドクターチェックと公傷制度を求む
春場所総括が続きます。これとあと1回かな? A^^;
春場所における稀勢の里の大逆転優勝は感動的などという次元を超えて、魂を揺さぶられるような衝撃を私たちに与えてくれましたけれども、その一方で、大ケガを押しての強行出場を美談化してよいのか? という疑問を持たねばなりません。
稀勢の里の故障については、4/2から始まる春巡業を休場する旨の届出によって「左上腕部筋損傷により1ヶ月の加療が必要」との診断が明らかになり、どうやら平成13年夏場所後の貴乃花と同じケースとして並ぶことは免れる見込みでありますが、これは不幸中の幸いと呼ぶべきものです。
もし、強行出場により故障が筋損傷から筋断裂へと発展してしまっていたら、稀勢の里の力士生命に終止符が打たれていた可能性が大なのです。
14日目の鶴竜戦で左が意思に反して動かなかったために無抵抗のまま寄り切られたことや、照ノ富士がヒザの故障を再発させていたために寄りの圧力を半減させていたことなど、不幸中の幸いがいくつも重なった結果、故障の重篤化を回避できただけ…というのが当たらずとも遠からずではないかと思ってます。
このように私が仮定の話しかできないのは、稀勢の里がケガをした13日目より場所が終わるまでの間、診断内容が明かされなかったからです。
ケガを押しての出場を可否どちらにするにせよ、故障した力士のためだけではなく、対戦相手のためにも、ドクターストップの権限を有するドクターチェックが必要です。
勝敗への影響を避けるため、故障個所やケガの大小は非公表で構いません。
ドクターチェックを通ったということさえ担保されるのであれば、対戦相手も気兼ねなく闘えるでしょうし、客も安心して相撲を観られるのですから、相撲協会管理下によるドクターチェックを求めます。
また、稀勢の里の他にも故障を抱えた力士はたくさんおりました。
初日から五日目まで休場し、六日目から出場した魁聖などはその代表例ですが、なぜそこまでして出場するのかと言えば、全休=15戦全敗扱いであり、番付運にもよりますが、下手すると15枚くらい番付を落とすことになるからです。
魁聖は前頭8枚目ですから、幕尻(=16枚目)まで8枚しかありませんので、全休すると幕内から十両へと落ちること必至な状況でありました。
結果として魁聖は3勝を挙げましたので借金9の扱いです。まぁなんとか幕尻付近で幕内に残れるのではないかと思われます。
魁聖のように十両落ちの危機に瀕さずとも、8勝7敗や9勝6敗でコツコツ上げてきた番付が、全休したら一気に二桁枚数落ちてしまう!と考えますと、なかなか休場するわけにはいきません。
また、1場所の負け越しでは陥落しない大関や、陥落の無い横綱も、「大関としての責務」「横綱としての責務」といった有形無形のプレッシャーにより、これまたおいそれと休場するわけにはいきません。
しかし、無理に出場することによって故障からの回復が長引きますと、力士本人もツライでしょうけれども、痛そうな相撲に銭を払って観る側もまたツライわけでして、誰得?と言いたくなる状況ですよね。
そう考えますと、相撲協会管理下によるドクターチェックと連動して、場所中に生じたケガに対する公傷制度が必要だと思います。例えば、公傷休場の場合は1場所だけ番付降格を猶予するとか、幕尻落ちに留めるとか。
過去に悪用や恣意的な運用が続いたことで廃止された公傷制度ですが、廃止に至った問題点を解消する内容に変更した上で、公傷制度を復活させてほしいと願います。
というわけで、日本相撲協会にはドクターチェックと公傷制度を求めます。