稀勢の里が新横綱の場所で優勝!

まさかまさかまさかまさかの千秋楽でした。

みなさんご存知のとおり、稀勢の里は全勝で迎えた13日目の日馬富士戦でケガをしてしまい、左腕をほとんど使えない状態になりました。

休場することを選びませんでしたから、医師の診断は秘密裏に伏せられましたけれども、テーピングの形、内出血の形跡、そして日馬富士に寄られた際に土俵際で試みた左突き落としの直後に顔を歪めていたことから考えられますのは、おそらくは筋断裂。

そして14日目の鶴竜戦では右から張っての左差しの立合を選択するも左はまったく機能せず、漏れ伝わる「昨日よりは良い」という本人コメントも空しく聞こえるほど一方的に寄り切られたのでした。

その直後、土曜日ですから暗澹たる気持ちの中で稽古の支度をしてますと、Twitter上で懇意にさせて頂いている方から「横綱が明日、左を使わずに照に勝つ方法あると思いますか?変化はなしで。」とのDMを頂きましたけれども、私は「まず勝てないですね」とつれない返信するほどに諦めきってました。


千秋楽は相撲を観る気がありませんでした。と、申しましてもボイコット的なものではなく、実は下妻地区剣道連盟の月例稽古会と時間が重なっておりまして、その帰りのクルマの中でラジオ観戦できればいいやー、くらいの気持ちでいたのです。

ところがところが、風邪をひいてしまったみたいでして、頭痛と発熱で朝は正午近くまで布団から出ることができず、ただでさえ紫雲先生が水戸大会の審判で不在のため中学生の形稽古を指導する人員が薄いところ申し訳なかったのですが、配布物だけ稽古会場に置きに行って謝しつつ帰宅したのでした。

で、布団の中でコホンコホン言いながら、寝過ぎて眠れないと言い訳しつつのテレビ桟敷だったわけですが、前日よりもテーピングの面積が小さくなっている稀勢の里を見てもなお、照ノ富士に勝つ見込みなど全く見出せませんでした。

それでもなおテレビ桟敷に居たのは「稀勢の里という横綱の生き様」を見届けたい。ただそれだけ。

伝家の宝刀「左おっつけ」も、命綱の「左差し」も無い状況で、どんな相撲を取るのか?いや、取ろうとするのか?その一挙手一投足を見届けたい。ただそれだけだったのです。


まずは本割。

その最初の立合は不成立となったわけだけれども、左を固めての右差し狙いの照ノ富士に対し、稀勢の里は右にズレて受けつつ右上手狙いも果たせず、照ノ富士が左を差し入れたのを稀勢の里が右小手に巻く…という展開まで見せての立合不成立。

これ、私が唯一脳内に描くことのできた展開でして、それがなんとネタバレしてしまいました。もうオシマイだー。そう思いました。

ところが、仕切り直しの一番に驚かされました。

最初の立合と同じく右差し狙いの照ノ富士に対し、稀勢の里は右掌を照ノ富士の前にかざしてブラインドを作るや、その右手を照ノ富士の右肩に掛けつつ左に動いて突き落とし、照ノ富士が応じて向き直ると稀勢の里は右で起こしつつ左を差しに行きます。

その左に力など入ろうはずもないのですが、これまでの対戦上の経験からの警戒か、照ノ富士は左差しを嫌って右後方に退いて突き落とすところ、稀勢の里が左をこじ入れつつの右ハズで押し込みます。

これを照ノ富士が堪えつつ右から絞って上手横褌、引きつけて寄るところ、稀勢の里左差し手を抜いて照ノ富士の後頭部に手を掛けて素首落とし気味にして半身の姿勢、間を置かずに右から突き落として勝利を得たのでした。

立合の右掌ブラインドは、何年か前に白鵬が栃煌山に遊び心でやらかして猛批判を浴びたものでしたが、まさかここで稀勢の里が使うとは思いませんでしたし、そこからの突き落としに落ちずに反応した照ノ富士に対し、まさか左があれほど働くとは思いませんでした。


しかしながら、まだ優勝決定戦が残ってます。

残念ながら、奇跡が2度起きると信じることができるほどに純真な心は持ち合わせておりませんで、右への変化も左への変化も本割で見せてしまった上での勝つ方法など脳裏に浮かびません。


で、優勝決定戦。

仕切りでは本割のとき以上に殺気と殺気がぶつかり合い、その不穏な空気に、故障持ちの両雄がどちらも無事で終わればそれで良い…と願うばかりの私でした。

最初の立合は照ノ富士が早く立ってしまい不成立。

そして仕切り直しの立合、稀勢の里が先に両拳を置きました。これを見て「うわー、横綱は当たって砕けろ作戦かー」と観念したものです。
稀勢の里両手突きの立合、これが上滑りして照ノ富士が両差しを得て万事休す…と思いきや、土俵際で思いっきり体を開きつつ、打った後に自らも土俵下へ転がり落ちる捨て身で乾坤一擲の右小手投げ!逆転勝利!


奇跡は2度起きました。神がかりってやつを初めて目の当たりにした思いです。
そして、なによりも稀勢の里という横綱の真の強さを知り、震える思いがしております。

この横綱と同じ時代に生き、しかも郷土の横綱として応援できることに、この上ない幸せを感じてます。今場所終盤の稀勢の里ほどの苦難など味わうわけもない私ですから、その苦難を引っ繰り返した稀勢の里を観てしまった以上、今後はそう易々と弱音を吐くわけには参りませんね。


ただその一方で、この強行出場を美談化してよいのかなぁ?とも思うのは事実です。

平成13年夏場所の貴乃花が右ヒザ半月板損傷の大ケガを押しての強行出場の末に優勝し、ときの宰相である小泉首相の「痛みに耐えてよく頑張った。感動した!」と共に記憶に焼き付いている件と今回の優勝が嫌でも重なりますけれども、貴乃花は翌場所から7場所連続で全休し、二度と優勝することもなく、貴乃花の相撲が復活することもないまま引退してしまったことは、なぜか人々の記憶からは薄れているみたいですけれども、これを思い起こすと、やはり強行出場を評価してはいけないように思います。

まぁ隆の里の鳴戸でもなければ止められなかったというのが現実なのでしょうし、それが稀勢の里の生き様なのでありましょうが…。

願わくば、あのときの貴乃花ファンのような後悔を私たち稀勢の里贔屓が味わうことの無いような、回復可能なケガであることを祈ってます。


~追伸~
春場所総括はまた別途。A^^;


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