旗の上がらない引き技とは?

昨日の記事をUPしましたところ、引きメンについてのリクエストを頂きましたので、審判視点での引き技について述べることでお応えしたいと思います。


もちろん引き技の判定も剣道試合審判規則第12条が根幹になりますので再掲しておきましょう。

[有効打突]
第12条
有効打突は、充実した気勢、適正な姿勢をもって、竹刀の打突部で打突部位を刃筋正しく打突し、残心あるものとする。
(剣道の試合・審判のルール|剣道を知る|全日本剣道連盟より引用)


まず、全ての引き技に通じることですが「残心あるもの」が肝要です。
引き技を打つ直前はお互いに竹刀の届く間合の中にありますから、残心として身構えと気構えを示すには、引き技を打った瞬間に一足一刀より遠い間合を得るべく相手を置き去りにしなければなりません。

相手を置き去りにしたか否かが、審判の判定材料としては打突の次に大きなウェイトを占めるかと思います。

しかし、相手を置き去りにする打突機会を得ることが難しい上に、場外に出ることを恐れてか退き足の長さと速度の不足によって、置き去りの形にならないケースも少なからず見受けられます。


もう1つ全ての引き技に通じる判定材料として「充実した気勢」を挙げておきます。有効打突判定の起点が「充実した気勢」であることは引き技でも同じです。なお、終点は先に述べた「残心あること」になります。

前に出て打突するのであれば、気合を伴う打ち間への攻め入りや、相手打突を引きつけて応じる胆力や、相手の出端に乗ることのできる身構えと気構え、といったもので「充実した気勢」を検知できます。

ではそれらの無い引き技の場合はと言いますと、鍔迫り合いからの崩しがそれに該当します。

鍔迫り合いにおける崩しは、木刀による剣道基本技稽古法の基本4・引き技にも(押し込み⇒相手が押し返すことで空く右胴を打つ)という形で含まれているように、引き技の基本であり起点なのです。

よって、審判としても「崩し」を起点に打突判定の気構えに入ります。

しかし、相手を崩すことなく今空いている打突部位を速さで打とうとする引き技がわりと多く見受けられます。

それはそれで高等技術と言えなくもないのですが、審判視点からすると起点の無い技になるので、本来であれば「充実した気勢」という起点から「残心」という終点までの長い線で有効打突判定すべきところ、打突そのものがいきなりの起点となり、そこに「充実した気勢」を求めることになるので、よほどバックリ唐竹割りで気合十分かつ強烈な引きメンでも打たない限りは、旗を上げられないのです。

とはいえ、速さを求めれば振り幅を抑えた軽い打突になるのが当然の理であり、そこに「充実した気勢」は乗りませんよね。結局のところ、崩しの無い引き技はよほどの実力差が無い限りは有効打突になりえません。


あとは昨日の逆胴について書いた記事でも述べたことなので省きますが、打突に「刃筋正しく」と「適正な姿勢」が必要です。

この点で引きメンはあまり問題になりませんが、引きゴテおよび引きドウは「刃筋正しく」ない打突、「適正な姿勢」ではない打突が目立ちます。

引きゴテや引きドウで見栄を切る選手に限って刃筋があさっての方向を向いているのは、そういう法則でもあるのかと思うくらいの共通項です。

また、「適正な姿勢」すなわち引き技を相手に正対する姿勢で打ち、正対したまま後退することは、相手の反撃をまともに食らうリスクを負わなければなりませんが、先述したように相手を置き去りにすればよいだけの話です。それができないなら引き技など打ちなさんな、というのが審判としての本音です。

まとめます。

引き技は、鍔迫り合いから相手を崩し(充実した気勢)、相手に正対し(適正な姿勢)、刃筋正しく打突し、相手を置き去りにすること(残心あるもの)を確認して旗を上げてます。


Leave a Comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です