白鵬円熟期へ向かう?

貴乃花の引退記者会見を機にまたぞろ土俵外の喧騒が始まるのでしょうが、それはさておき土俵の話、大相撲秋場所を私なりの視点で総括させて頂きます。


まずは贔屓の稀勢の里について。
金星配給1で10勝という成績は上出来。もう2つくらい星を落としても仕方ない相撲内容でしたが、今場所は相撲内容よりも結果。「勝ちに不思議の勝ちあり」の連続に、相撲の神様に愛されているなぁと思いましたね。

中盤評でも述べましたが、千代大龍、玉鷲の押し相撲、逸ノ城の突き押しに抗することも出来ずに土俵を割ったことで、馬力不足を露呈。

序盤は足の構えと運びに弟弟子の高安ともども改良が見られ、それが馬力不足を補ってサーカス相撲を可能にしてましたが、付け焼き刃なのか中盤は足運びが乱れて腰が立つようになり、終盤は立合も高くなってました。

そのせいか立合の手着きも不十分で、自分の機で立っているのに後手を踏むことも目立ちました。

ただ、これらは来場所までの時間があれば調整できるものであり、今場所がボトムであとは上積みするのみと考えれば逆に好材料。

左おっつけや左差しの力や技芸は故障前のレベルに戻らないかもしれませんが、馬力が戻り、足運びが向上し、立合に磨きがかかれば、今場所唯一の好材料と言える右上手の引きつけがもっと活きるでしょう。

実はまたケガしてました。なんてことがない限り、九州場所は大いに期待できます。


続いてお題に上げた白鵬。
まずは全勝優勝と横綱800勝と幕内1000勝、おめでとうございます。

中盤評での私の予想~全勝は難しい~を見事に覆しました。白旗です。
圧巻は十二日目の栃ノ心戦。両差し狙いから右をこじ入れるや栃ノ心が左上手を得て圧力をかけたその刹那に右掬い投げ一閃。栃ノ心が一瞬宙に浮いて横転した様は合気道を見ているかのような錯覚を覚えたほどです。相撲の技芸は実に奥深い。

一方、やはり立合の駆け引きには疑問があり、とくに十一日目の高安戦はその極み。問題視すべきは立合の張りではなく(や、嫌いですけどね)合気外し。今場所は高安戦と豪栄道戦と鶴竜戦が該当。
立合は力士双方の合意をもって成立するところ、合気なき立合は何をもって合意とするのか、問えるものならば大横綱本人に問いたいものです。

それと、今場所も逸ノ城戦で出てしまった「駄目押し」と呼ばれる愚行。

これについては白鵬よりも実況や報道に注文がありまして、完全に寄り切って両者がマワシから手を放したところを突いて土俵下に落とす行為を「駄目押し」と呼ぶのはやめてほしいのですよ。
押し相撲の力士が相手が土俵を割ったのをセルフジャッジせずに突き押すことが本来の「駄目押し」であって、賞賛されこそすれども咎められる行為ではありません。
白鵬が逸ノ城にかましたような愚行は、それを働いたのが大横綱であろうとも、審判部が呼び出して厳重注意すべきです。

ただ、合気外しの立合も、上記のような愚行も、一頃よりは少なく、あからさまなものでもなくなってます。そしてアンチの私でさえ魅了する技芸を披露。これはもしかしたら、白鵬が円熟期を迎えるのかもしれないなぁとも感じるのですね。

円熟期を迎えた白鵬と、馬力の満ちた稀勢の里による大相撲、観られるといいなぁと夢想してしまいます。


さて鶴竜。
中盤評で私は全勝を予想しましたが、真逆の終盤全敗は驚きました。
十日目までの鶴竜は完璧でしたから、今、中盤評を書いている私に声かけることができるとしても、全勝予想を覆す説得は不可能でしょう。

千秋楽結びの白鵬戦で露呈しましたが、右ヒジですよね。
左上手を引いた白鵬に絞られると、あの鶴竜が痛がって腕を抜いて相撲を放棄しましたから、よほどのことだと思います。

その右ヒジを痛めたのは十一日目の栃ノ心戦。栃ノ心の外四つからの吊りを両差しで堪えたのを力尽くでぶっこ抜かれたときでしょうね。

そう考えれば、左四つの高安に左上手投げで振り回されたことも、豪栄道に立合で余裕なく突っ掛けたことも、稀勢の里に右上手を取りに行ったことも、全てが繋がります。

ケガが重くないことを心より祈ってます。
十日目までの鶴竜は今場所のナンバーワン力士でした。その再現を望みます。


豪栄道、初日の魁聖戦が悔やまれます。
低く鋭い立合が十五日間安定しており、久々に強い豪栄道を楽しめました。

ただ、十三日目の鶴竜戦などで今場所何度か見せた立合で手着きのない左張りは白鵬のそれよりも批判されるべきものであり、改めて頂きたいものです。(今場所の白鵬の立合の張りは高安戦を除いてほぼ合気)


高安はその豪栄道に快勝しながら、白鵬はともかく十四日目に御嶽海、千秋楽に栃ノ心と連敗して今場所を終えたあたり、やはり場所前の調整不足が祟ったのだと思います。

ただ、稀勢の里についての段でも述べましたが、おそらくは兄弟子横綱とともに取り組んだのであろう足の構えと運びに改良した点がいくつも見られ、それは終盤まで緩みませんでした。大収穫と言って良いかと。

稀勢の里と同じく、しっかりと調整して九州場所に望めば、飛躍を期待できるでしょう。


カド番大関の栃ノ心と両関脇(御嶽海、逸ノ城)はそんなに出来が悪かったわけではないのですが、横綱大関陣の充実ぶりに食われた形で1桁の勝ち星に終わりましたが、それでも勝ち越せるあたりに地力を感じます。

とくに大関取りが掛かっていた御嶽海は、悔しさ一杯でありましょう。
しかしながら、現在の番付を維持して迎える九州場所でこそ真価が問われます。ぜひ上積みして迎えてほしいものです。


力士評の最後に、阿炎について特別に述べたい。

阿炎は6勝9敗と負け越したけれども、負けた相撲も含めて思わず拍手喝采を贈った相撲が実に多かった。

先場所までの阿炎については立合変化の外連味がどうにも好きになれず、今場所も序盤のうちは警戒して観ていたものですが、今場所は変化を封じたのか上位を相手に外連味なく両手突きの立合で通し、土俵狭しと動き回る敢闘精神溢れる姿は観ているこちらを熱くさせてくれました。十年くらい前、嘉風について評価を転じたときと同じ印象ですね。

来場所は幕内下位に番付を落とすでしょうが、また番付を戻し、強くなって役力士と対戦してほしい。


今場所は三賞すべて該当なし。これについては苦言を呈したい。
上位陣の充実ばかりが目立っていたが、幕内下位の熱戦がそれを盛り上げていた今場所なのに、三賞すべて該当なしとはどういうことなのか?

殊勲賞は仕方ないとしても、敢闘賞なきことは敢闘精神あふれる力士が不在だった、技能賞なきことは技能に優れた力士がいなかったということなります。

熱戦を繰り広げた力士と、毎日満員札止めにした観客を、これほど馬鹿にした話はありますまい。

三賞の選考方法に問題があると言わざるを得ず、敢闘賞と技能賞は必ず誰かが受賞する仕組みに変更して頂きたいと、強く願ってます。


うーん、こうして書いたのを査読すると、どうにも批判的な言が目立ちますね。
そう意外に思えるほど、今場所は観ていて楽しいものがありました。
私の場合は稀勢の里による吊り橋効果もあったでしょうけどね。A^^;

また来場所、11月の九州を楽しみに待ちましょう。


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