初場所全体総括

稀勢の里の優勝を受け、すでに記事を上げてしまってますが、あらためまして平成29年初場所の全体総括をしてみたいと思います。

3横綱4大関の7人のうち、2横綱1大関が途中休場、その2横綱と2大関が負け越しという横綱大関陣ガタガタの場所となってしまいましたが、元気の良かった三賞受賞力士と稀勢の里の安定感が主因となって熱気が醒めなかったことは幸いでした。

ただ、横綱大関陣が崩れた影響なのか、関脇以下の二桁白星が6人(高安、御嶽海、豪風、貴ノ岩、蒼国来、逸ノ城)、同じく二桁黒星も7人(栃ノ心、隠岐の海、栃煌山、妙義龍、錦木、臥牙丸、大砂嵐)と、明暗くっきりと別れました。これに琴奨菊の大関陥落が加わるのですから、来場所の番付編成はとても難しいです。どーする審判部?

相撲内容的には、私は不調でございますと顔に書いてあるかのような諦めの早い相撲と、ぶつかり合い、攻め合い、土俵際も粘りに粘る白熱した相撲とがモザイク状に混ざっていて、全体評価の難しい場所と言えます。まぁ、面白くない気持ちのまま結びの一番を見終えることが1日も無かったので見応えのある場所ではあり、大いに楽しませて頂きました。


では、各力士評は優勝した稀勢の里から。

14勝1敗という成績は立派であるけれども、稀勢の里自身はあまり変わってませんよね。両足跳びの立合も3番ほど見ましたし、いつものエアポケットは琴奨菊戦に現れました。
ただ、先場所とは異なって左おっつけや左を差しての腕返しなど、左が充分に使えており、そこに加えて白鵬を含む周囲が勝手にこけまくってくれましたから、状態の良さと追い風にフォローされての優勝ではありました。

とはいえ、やはり稀勢の里自身の成長あっての優勝です。とくに、千秋楽の白鵬戦が印象的でありましょうが、これに四日目の松鳳山戦、中日の隠岐の海戦、十一日目の遠藤戦も加えまして、立合の先手や左差しを得られず押し込まれても慌てないし腰が立つこともないという点で顕著でした。

この、角界随一の受け身の強さを磨くことによって、横綱らしい横綱へと円熟していくものと期待しております。


では次に、優勝次点の白鵬…と思ったら、優勝次点は12勝で蒼国来だったのですね。やー、ビックリ。

ビックリなどと言っては蒼国来に失礼ですが、でも蒼国来は幕内下位が定位置の力士でしたし、これまで勝ち星を二桁に載せたことはなかったのですよ。それが、割りを崩して当てられた御嶽海と高安に完勝しての12勝ですからね。やっぱりビックリですよ。

私はかねてより「蒼国来に技能賞を!」「勝ち星に関係なく技能賞は与えられるべき」と述べてきましたが、この12勝によりやっと技能賞受賞となりました。とても嬉しいです。

今場所の相撲も、彼に技能賞を与えずして誰に与えるんだ?と思うほどの相撲内容で国技館を湧かせてくれました。
蒼国来が勝った12番を追えば、おそらくは(決まり手という意味ではない)相撲の技のほとんどを見ることができるかと。とくに、右の絞り、吊り寄り、なまくら四つ、といった技芸に古典復興という意味でのルネサンスを感じ、昭和のオールドファンにはたまらんのです。

業師・蒼国来の名を定着させるためにも、来場所の幕内上位戦でのひと暴れを期待しております。


さて、最後まで稀勢の里と優勝を争った形の白鵬について。

や、十四日目で稀勢の里の優勝が決まってしまった上に、前述したように優勝次点は2差の蒼国来で白鵬は3差という星並びでは、「最後まで優勝を争った」とは言い難いものがありますね。

加えて、千秋楽の稀勢の里戦。相手充分の左四つは覚悟の上で、立合の出足とスピードで一気に土俵外へ押し出さんとしたあの取口は、勝つための相撲としては最良策でありましょうが、同時に横綱の格をかなぐり捨ててのものでありました。

優勝がすでに決まった状態での千秋楽結びの一番で、自身は1人横綱、相手は優勝大関で来場所は横綱になるかもしれない力士であるならば、取るべき相撲は乾坤一擲の奇襲ではなく、自身の金看板である右四つの相撲。これを選択してほしかったのですが、その結果はご存知のとおりで、斜陽感を決定づけてしまいました。

ただ、日馬富士と鶴竜が途中休場してしまう中、1人横綱として責務を負い、まっとうしたことだけは高く評価しなければなりません。終盤戦の相撲を観る限り、途中休場した両横綱とそう変わりのないコンディションの悪さだったと思うのです。
それでも千秋楽まで取り切っての11勝というのは大したものです。


敢闘賞を受賞した高安について。

序盤評あたりで書いた気もしますが、とにかく先場所より体のバランスがよろしく、よく動けてました。加えて、稀勢の里評でも同じ事を書きましたが、自分不利の体勢や組み手になっても慌てることがないのですね。おそらくは田子ノ浦部屋として取り組んでいたことの効果なのではないでしょうか。

九日目の白鵬戦での勝利は、直前に兄弟子の稀勢の里が琴奨菊に敗れていたこともあって、その援護射撃ぶりばかりがクローズアップされてましたが、白鵬がいつもより前に仕切る立合を見せたのに対し冷静に対応した点と、まったく臆することなく当たり前に立合って当たり前にぶつかって当たり前に突き立てて当たり前に突き出したという点で際立っており、以降の白鵬の相撲を崩壊させたことも含めて高く評価されるべきかと。

ただ、白鵬に勝った貴ノ岩が殊勲賞であるのに、白鵬と鶴竜に勝っている高安が殊勲賞を得られないことだけが不満です。
小結という番付での11勝とその相撲内容は充分敢闘賞に値するとは思いますので、殊勲賞とのW授賞でも良いでしょうし、敢闘賞は小結の11勝より37歳の11勝=豪風に授賞しても良かったのではないかと思いました。


殊勲賞の貴ノ岩ですが、まさか白鵬に初顔で勝つとは思いませんでした。
あの一戦、工夫してましたよね。白鵬の両差し狙いを予測していたのかのような左を固めて右上手を取りにいく立合は、白鵬には想定外だったのでは?
以降の流れるような猛攻はお見事としか言いようがありませんでした。

一方、幕内下位での星の積み上げは地力のまんまかと。家賃安だっただけですね。幕内上位で互角に闘える地力は着いていると思いますので、それを来場所は証明してほしいものです。


蒼国来の他に御嶽海にも技能賞。
んー、私個人的には敢闘賞が相応しいかと思うのですけれども、選考理由が寄りの技能を評価してのものであるならば、選考委員を褒めたいなぁと。
御嶽海は引く方向を読んでその方向を塞ぐように寄るのですよね。これ、相撲の基本であるようでいて、出来る力士が少ないゆえに、引き落としや叩き込みが決まり手に多く見られるのですよね。
安易な引きを無くすためにも、御嶽海の寄りの技能は他の力士にも伝搬してほしいものです。


今場所活躍した力士の話ばかりしたので、崩れた力士の話も少々。

大関を陥落した琴奨菊。残念ではあるけれど、2場所連続で5勝しかできない大関が陥落した翌場所に10勝以上を上げられると思えるほど私は楽観主義ではありません。小錦・霧島・雅山コースを歩むつもりであるのなら、春場所は全休して出来うる限りの体のケアを施した上でお願いしたい。

照ノ富士は東京場所で負け越すこと連続4度目となってしまったけれど、今場所は脚の衰えが顕著で、それにより閂に極めても極め出せず、肩越しの上手も効かずでは勝つ術がありませんでした。ヒザが治らない限り、衰えた脚を復活させることは不可能。と、考えますと、大関陥落も間近かなぁと。さびしい。

琴奨菊と照ノ富士に比べれば、日馬富士と鶴竜はまだ復活の芽があるかと。両横綱ともに悪いなりの相撲が取れますし、日馬富士はケガとの付き合い方も知ってます。今場所のことは忘れてしまいましょう。


今場所が新旧交代の契機となるか否かは、来場所=春場所で決定付けられるでしょう。今から春場所が楽しみです。

以上、いつものごとくまとまらない総括でした。


Comments (4)

  1. t-m

    再び相撲FANのt-mです。
    次の2017年春場所は、大関の稀勢の里が横綱昇進、琴奨菊が関脇陥落により
    「4横綱2大関」という珍しい番付と成りますな。
    調べたらこれは平成12年初場所以来、17年振りの事だそうです。
    「横綱ー曙・貴乃花・若乃花・武蔵丸、大関ー千代大海・出島」

    その後横綱は、若乃花が翌平成12年春場所、成績不振が続いて
    横綱在位11場所の短命で引退。
    で大関は、貴ノ浪が関脇10勝し復帰するも2場所で関脇再陥落、
    ほか武双山(2場所で関脇陥落後、直ぐ大関復帰)、雅山、魁皇と言った新大関が次々と誕生しました。

    自身としても平成12年初場所のように、4横綱の内誰が早く引退してしまうか、
    新大関は誰がいつ誕生するか、その辺が注目されますね。

    Reply
    1. 甚之介 (Post author)

      t-mさん、コメントありがとうございます♪
       
      まず4横綱2大関ですが、平成12年のケースと比べますと春場所のそれはかなり疲弊してますね。
      満ちているのは稀勢の里1人。斜陽感の定着した白鵬。日馬富士、鶴竜、豪栄道は休場明け。照ノ富士はカド番ときては、新大関の早期出現を期待するほかありません。
       
      春場所で関脇を務めるであろう玉鷲と高安が最短距離にいるわけですが、兄弟子である稀勢の里と当たらずに済む高安は大チャンスでありましょう。
       
      横綱の引退については言を慎みます。

      Reply
  2. shin2

    横綱2人大関1人休場、大関2人負け越し。なんか「焼け野が原」みたいな場所でした。
    稀勢の里の優勝と横綱昇進は嬉しいが、こんな惨状でなければ優勝できないのか。ちょっと手放しでは喜べない。
    稀勢の里がこれから全盛期に入るのか、それとも次の日本人横綱候補が出るまでのリリーフ役か。
    リリーフにしても長くなりそうだ。とにかく優勝と横綱昇進おめでとう。

    Reply
    1. 甚之介 (Post author)

      shin2さん、コメントありがとうございます♪
       
      初場所の3横綱4大関が春場所は4横綱2大関となるわけですが、t-mさんへのReplyにも含めましたように、常勝ではなくなった白鵬+休場明け3名+カド番1名+稀勢の里というラインナップから考えますと、春場所も「焼け野が原」となる可能性は大ですね。
       
      だからこそ春場所の稀勢の里に新横綱として求められるものは多く、真価を問われる正念場と言えます。

      Reply

Leave a Comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です