Sport Accordは大丈夫か?
IOCとSport Accordの関係がゴタゴタしてきたみたい。
開催間近の16WKCを主催するFIKもSport Accord傘下ですから、ちょいと書いておきたい。
【IOC】テコンドーやレスが関係停止 スポーツアコードの五輪改革批判で – 産経ニュース
Sport Accordと言っても知らない人の方が多いと思うのですが、簡単に言うとIOC(国際オリンピック委員会)の関連団体で、以前はGAISF=General Association of International Sports Federationsという名前だったことからもお分かりのとおり、各スポーツ競技の国際連盟(IF)に対し、当該スポーツ競技で唯一のIFであることのお墨付きを与える組織でした。
「でした」と過去形である理由は、どうもSport Accordと名称を改めてからは、単なる許認可団体的な組織だったものが、各種大会を催すほどに主体的な活動をするようになり、剣道もコンバットゲームズという格闘技系スポーツを集めた国際大会に正式競技種目として参加協力させられるなど、組織としての性格が変わってきたからです。もはや単なる許認可団体とは言えません。
こうなりますと、IOCとも利害がぶつかることになります。
オリンピックの正式競技種目も含め、全競技のIFがSport Accordに加盟していますから、例えばコンバットゲームズの場合には柔道やレスリングといったオリンピック競技も含まれるわけでして、IFが主催する世界大会とオリンピックでうまく棲み分けているところに割り込む形のSport Accord主催大会という存在は、IOCとオリンピック競技種目のIFにとっては邪魔でしかありません。
一方、今回Sport Accordのビゼール会長がIOCの何に反発しているかといえば、東京オリンピックでも検討されているように、開催国推薦により競技種目を加えることができるようにするなど、オリンピック競技種目への採用に柔軟性を持たせようとするIOC方針に反発しているのです。
どういうことかと言いますと、要するにオリンピック競技種目から漏れた
スポーツを、Sport Accordが格闘技系で集める、球技系で集める、頭脳系で集めるなどして国際大会を企画⇒主催することで利益を得ようと…スポーツの多様性を維持しつつ国際的なスポーツ振興を図ろうとしているところ、IOCがオリンピックに採用したりしなかったりするのはSport Accordにとって迷惑この上なく、非オリンピック競技はぜーんぶSport Accordが統括するんだから手ぇ出すな~ってのがビゼール会長の本音でありましょう。
これに対し、前述したようにメジャースポーツのIFはオリンピックとIF自身が主催する世界大会の二頭立てで充分であり、今回のビゼール会長の舌禍はメンドクサくなってきたSport Accordを抜けるのに渡りに舟の理由なのですよ。で、ビゼール会長もそれはある程度予測していたと思います。
が、レスリングほか、オリンピック競技の当落線上にある競技種目のIFまでもが関係停止という玉虫色ながらも距離を置く姿勢を表明したことは、ビゼール会長にとって想定外だったのではないかと。
だってね、オリンピック競技から漏れたときにSport Accordから抜けてたら、IFから単なる任意団体に成り下がってしまい、IFであるがゆえに得ていた有形無形の支援が打ち切られるし、反主流派が立ち上げた新組織が電光石火でSport Accordに加盟してIFとして公認されてしまうかもしれないわけですよ?
なのに距離を置くということは……
下衆の勘繰りの域を出ませんが、IOCがSport Accordの代替となるIF許認可団体を受け皿として用意してたりしませんよね?という不安がよぎります。
なぜ不安視するのか?
日本主導の国際剣道連盟(FIK)のIFとしての地位が揺らぎかねないからです。
私たち日本の剣道家は、剣道をスポーツであると定義することに抵抗のある方が大多数を占めますし、「スポーツではない」とする方も多数おられます。
その元締めたる全日本剣道連盟も同様でありますから、スポーツ競技のIFとして認めないとすることのできる理由をこちらから提供してるも同様の状況なのです。
加えて、GAISFという名称だった頃は純然たるスポーツであること、つまりは特定国の文化性や宗教色の排除が加盟条件として求められましたので、剣道は1回目の加盟申請が却下され、ロビー活動を経て2回目の申請でようやく賛成多数(つまり全会一致ではない)で加盟を承認されたという事実があります。あ、ちなみに21世紀=つい最近の話ですよ。剣道のGAISF加盟承認は2006年で、まだ10年も経ってません。
Sport Accordになってからは広く加盟の門戸が開かれるようになりましたが、もしIOCがSport Accordの代替組織を用意するならば、GAISF時代のような硬直した加盟承認基準に戻ってしまう可能性が充分にあると思います。
そうなりますと、スポーツとしての競技性を高めている韓国のコムド系組織が、FIKに先んじてIFとして認められてしまう恐れが現実味を帯びることになるでしょう。
Sport Accordのビゼール会長は国際柔道連盟(IJF)の会長でもあり、山下泰裕氏の排除や、ランキング制度の導入など辣腕を振るってきた人物で、このままおとなしく引っ込むとは思えません。注視が必要です。
また、日本の剣道家も剣道のスポーツ競技としての性格を認めつつ、武道としての特質をいかにして維持していくかということを、根性論ではなく国際的にも通用する論理で構築するために、これからの剣道のあり方を本気で考える必要があると思います。
それさえしっかりしていれば、Sport AccordとIOCの関係がどうなろうと大丈夫なのですが、現在の状況はちょいとやばいかもしれませんぜ。