全日本剣道選手権を観戦しました

11月3日、今年もまた日本武道館へと足を運びました。
教え子である小中学生に全日本剣道選手権大会を観戦させるためです。

正直な話、小中学生に全日本レベルの試合を理解できるとは思ってません。ましてや小中学生無料の2階席ではとてもとても。

ただ、剣道界最高峰と言える同大会の空気、とくに準々決勝以降で試合場を真ん中の1つにしてからのピリピリした雰囲気、これを肌で感じてほしくって、毎年バスツアーを企画してます。

その意味では、故・川添哲夫先生の優勝(1971年)以来数四十数年ぶりとなる大学生の優勝という、今後に剣道の歴史を語る上で欠くことのできない出来事に立ち会えたことは、引率した小中学生にとって宝物にも等しい経験となったものと思います。ツアーコンダクター冥利に尽きるとはこのことかと。


毎年のことながら、日本武道館には午後入りです。午前中は社会科見学的なところに立ち寄り、昼食を済ませてからの重役出勤w。

私などは、本音を言えば開会から閉会までドップリと観戦に浸かりたいのですが、小中学生に6~7時間も試合を観させるのも酷なので、毎年この形態です。今年の寄り道先の話は後で書きますが、今年は15時近い武道館入りでした。

というわけで、席を見つけるのに手間取ったこともあって、3回戦の途中からの観戦となりましたけれども、観戦開始と同時に内村選手の敗戦を目の当たりにし、度肝を抜かれました。

や、内村選手も警察官選手権で3回戦敗退するなど、必勝とは言えない状況であることは存じてまし、お相手の選手は同選手権で準優勝してますから、敗戦自体は不思議ではないのですけれども、こと全日本に限りましては、内村選手が過去8回の出場で全てベスト8入り、うち6回は決勝に進出していて通算優勝回数3という”連対率”の高さでしたから、「うっわー、内村選手負けちゃったよー」という空気が会場を支配しましたよね。

その内村選手含め、昨年大会のベスト8のうち6人までもが今大会にも出場を果たし、もちろん虎視眈々と王座を狙ってましたでしょうし、周囲の期待も高いものがありましたけれども、その6人が1人も日本武道館の真ん中には立てない、つまりはベスト8に入れないとは、夢にも思いませんでした。

と、言いますのは、初出場者の優勝があの宮崎正裕先生(1990年)以来二十数年ぶりというところから察せますとおり、64人もの超一流剣士による1dayトーナメントという長丁場である上に、観客数で比類なき日本一の大会で剣道界内外の注目度が桁違いですから強いられる緊張感がとんでもなく高いなど、経験がモノを言う大会なのですよ。

しかし今年は、昨年のベスト8が1人もベスト8に入れず、ベスト4のうち3人までもが初出場者というのは事件と言ってよい出来事です。

おそらくは世代間ピークの谷間にあるのでしょうね。
今大会を大きな参考にしようとしていたであろう、来年の世界剣道選手権東京大会の選手選考はとても難しくなったことでしょう。


さて、3回戦からしか観ていない、つまりは大会全試合の4分の1しか観ていないことを前提としますが、今大会で印象に残った1本ベスト3を挙げてみたいと思います。

【準決勝】竹ノ内vs畠中 竹ノ内選手のドウ

このメン返しドウが竹ノ内選手を勢い付かせましたよね。ウチの小中学生の多くが印象に残った1本に挙げてました。


【準々決勝】畠中vs中野 畠中選手のツキ

両者譲らず硬直気味な試合時間終盤、何か前触れみたいな緊張感が走ったと感じたところにこの強烈なツキでした。二階席で観ていても総毛立ちました。


【決勝】竹ノ内vs國友 竹ノ内選手のメン

やっぱりこれでしょう。このコテメンですよね。決勝後に日本武道館から一気に出た観衆による雑踏の中、タンターンと足を踏む小中学生の多かったこと多かったこと。(^^)


優勝した竹ノ内選手には勢いを感じました。
全日本レベルの選手は誰しもそうですが、その中でも竹ノ内選手は受けっぱなしで終わらない、必ず自分の打突で終わるという点で、とても際立ってました。

それがほとんどの試合で2本勝ちという結果に表れている気がします。この「下手な鉄砲も数撃ちゃ…」ではない手数の多さは、少年剣士も見習うことのできる点ではないかと思いますね。

ただ、竹ノ内選手の今後は色々な面で厳しいでしょうね。

日本一の選手となったからには大学生日本一になることが求められますし、剣道界の外にも名声が届いたことにより求められる品行方正さは、本来なら自由であるはずの学生生活が堅苦しいものに変化しかねません。そして、来年も激戦区である福岡県予選を勝ち抜き、出場権を得ることが求められます。

過去の日本一となった剣士達が口を揃えて言う、「日本一になることよりも、日本一になってからの方が大変」を、これ以上ない形で経験することになる竹ノ内選手のこれからを考えると、大拍手で祝福する半面で心配もまた先立つのですね。くじけずに頑張って頂きたい。


最後にお小言を述べておきましょうか。
全日本選手権は日本一の剣士を決める大会なのですから、観客の方も日本一の観客であってほしいと願っております。

や、あの大会場たる日本武道館をほぼ埋め尽くした大観衆が、シーンと水を打ったような静けさで試合場を見つめるあの空気は、多方面から、とくに他競技の方々から称賛されるほどの評価を得ております。

が、しかしその一方で、とくに2つの試合場で同時進行している3回戦までの試合観戦において、とくに試合場から遠い2階席において、乱れが増しているような感があります。

私の前の席の大学生は、目当ての選手の試合が終わるとスマホでゲームしてましたよ。声かけてやんわりとやめるように促しましたけれども、周りを見渡しますと、厨房や工房がゲームしてる姿がチラホラしてました。

自分の教え子だったら「お前ら何しに来とるんじゃ!」「ゲームなら館外に出て存分にやりやがれ!お前の座ってる席で観戦したい人はお前の後ろに大勢いらっしゃるんだぞ!」といった具合に小1時間は説教しているところでありますが、引率者が気付いていないわけがないとも思うのですけどね。

あ、ウチの子達にはゲームの持ち込み自体を禁じてますので大丈夫かと。A^^;

ほか、階段を転がり落ちる空き缶の音が響くとか、泣き叫ぶ幼児が放置されているとか、他の剣道大会の会場ではありえないマナーの悪さが生じ始めてます。

また、集団で2階席に陣取る学生が主な発生源ですが、こと全日本選手権では審判に旗を求める集団的な拍手は場にそぐわないと思います。あきらかに1本に届かない打突に対してある集団だけが拍手する光景は、みっともないとさえ感じます。

応援する選手の機会を捉えた打突に拍手し、その逆に対戦相手が応援する選手に襲いかかる打突には思わず身をすくめて拍手どころではないというのは自然なことでありますけれど、それが集団化すると試合場外からの不当な圧力になりかねません。

剣道の試合に応援はあって然るべきですが、応援団は不要ではないでしょうか?

ともあれ、剣道日本一を決める大会に相応しい、日本一の観戦マナーを求めたいものです。少なくともウチの教え子たちにはあらためて教示し、日本一の観客の一員として、来年も日本武道館に足を運ぼうと思っております。


誤審騒動につきましては記事をあらためます。




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