序盤戦を経て夏場所を占う

大相撲夏場所五日目を終えまして、序盤戦から中盤戦へと移ります。
序盤戦で垣間見えた各力士の状態を振り返りつつ、今場所を占ってみましょう。

五日目のラジオで実況アナが「今場所も白鵬の一人旅という様相を呈してきました」みたいなことを言っておりましたが、それはどうかな?と思っております。

たしかに白鵬が1人だけ全勝ではありますが、1敗で追う力士が両横綱を始め10人もおります。まだまだ一人旅と呼ぶには無理のある状況であり、せめて白鵬が全力士と2差を付けてから使ってほしい言葉ですね。

それに、私は白鵬の状態はあまりよろしくないと見ております。
初日は初顔の千代鳳に張って上手を取る立合、二日目は小兵の豪風を相手に右かち上げと、格下の相手に立合で策を弄するあたりに自信の無さを感じました。

三日目以降の立合はまともなものに落ち着きましたが、3番ともに体が離れて見合う場面があり、五日目の宝富士には上手を与えてあわやというところまでいきました。相撲の流れが切れるあたり、白鵬らしくありません。これを中盤でいかに立て直すかが鍵になるかと思います。


序盤で自分の相撲を取り切れているな-と思ったのは第一に稀勢の里。第二に安美錦。

稀勢の里は四日目の碧山戦で電車道に運ばれた相撲で評価を大きく下げてしまいましたが、立合姿勢は5番全て低く、鉄壁の左おっつけも復活し、右からおっつけつつ相手の下手を切って右上手を取る技芸も宝富士戦で試運転済みですし、安美錦の両差し狙いもおっつけて完封と、勝った相撲の内容がとても濃いのですよ。

右足親指の故障はほぼ完全に復調した様子で、左右の動きも実に軽やかです。
然るに、碧山戦は調子が良すぎるがゆえの慢心と気負いが生じたのではないかと。

で、自分勝手に立合姿勢に入って勝手に焦れて、対照的に碧山は大関を悠然と見下ろしつつ自分の呼吸で万全の立合。その結果の電車道。敗因が分かりすぎるほど分かっているので、中盤戦以降で同じポカはしないでしょう。たぶん。(ちと不安 A^^;)

その稀勢の里に負けて1敗となったものの、安美錦も独特の勝負勘が久々に冴え渡ってます。両関脇に上半身のサポーターが消えた琴奨菊を含めての4勝はお見事。
立合で変化を見せたかと思えばズバっと両差し。安美錦が中盤戦をかき回してくれると面白くなります。


さて、新横綱の鶴竜ですが、私は高評価を与えたい。
新鋭の遠藤に金星を与えてしまった相撲が印象強すぎですけれども、勝った相撲は常に前傾姿勢がしっかり保たれていて圧力があり、独特な間合感覚も先場所同様に冴えてます。

ただ、遠藤戦の敗因でもあるのですが「差し手争いで膠着すると横綱は引く」と全力士にインプットされてますので、もう1番くらい同じ形で金星を配給しても驚きません。

しかし、新横綱という気負いも感じられませんし、固さも見られず、自然体で相撲を取れてますから、大崩れはしないでしょう。


そして西の横綱である日馬富士ですが、初日の嘉風戦での完敗と、二日目の碧山戦でのバタバタした相撲にどうしたものかと思っていたのですが、序盤を終えてみるとなんとか相撲がまとまってきた感じで、立合の鋭さや突き押しの的確さが戻りつつあります。

もともと白星を重ねていくことで自らを奮い立たせるタイプの横綱ですので、このまま復調していけば、横綱大関総当りが始まる終盤戦に間に合うのではないかと思ってます。

ただ、初日の相撲で土俵下に落ちた際、故障の癒えない足首を痛そうにしていたのと、横綱土俵入りでの四股の軽さが気になります。無理をしていなければ良いのですが…。


遠藤について述べておきたい。
二日目の松鳳山との相撲で松鳳山の厳しい立合を顔面で受けて圧倒された遠藤なのですが、翌三日目の玉鷲戦、そして初金星を挙げた鶴竜戦と、松鳳山のコピーとしか思えない立合で圧倒したのには驚きました。

遠藤の弱点は立合の当たりの弱さにあったはずで、事実、初日の旭天鵬戦、二日目の松鳳山戦はそれが垣間見えたのに、三日目からの大変身。スゴイなんてもんじゃない学習能力の高さ。恐れ入りました。


大砂嵐ですけどね、とうとう立合の右かち上げが通じなくなりました。
押し相撲の力士にはかち上げる右腕の支点にあたる右肩に頭から突っ込まれて無力化され、前さばきの上手い力士にはかち上げんとする右腕を下から手をあてがわれて無効化されてます。

持ち前の身体能力で乱戦を制する形により白星1つ先行してますけれども、中盤戦以降も苦しい相撲が続くと思います。それでも右かち上げに拘るのかな?


序盤好調の高安。立合から突き起こしてマワシを取る相撲に固めた様子が覗えます。もしもそうなら大賛成です。

元より高安はマワシを取っての相撲にセンスが見え隠れしていました。この序盤戦では出し投げも随所で見られ、技芸の幅が出てきたように思えます。

相撲の型を定着させんとする場所ですから、中盤戦以降では白星にはこだわらずに高安の進化を楽しみに観戦します。


他にも、豪栄道にエンジンがかかりつつあること、サポーターが減った琴奨菊の上半身と下半身のアンバランスについて、立合の角度が良い嘉風が相撲の流れの中で体が立ってしまうことの不安、幕内に復帰した蒼国来の体がひとまわり大きくなってること、千代の国は何であんなにケガが多いのだろうね、などといったあたりにも斬り込みたかったのですが、出勤時間が近付いたのでこのへんにしておきます。

では、夏場所中盤戦を存分に楽しみましょう。




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