掛布雅之の教示

や、当然ながら私がミスタータイガースの掛布雅之氏から直接に教示を頂いたわけではありませんで、以下に紹介します記事から私が勝手に示唆を受けたとしているだけの話です。

ユニホーム姿で試合前の打撃練習をみつめる掛布DC。ゴメスの方から声を掛けた。通訳とオマリー打撃コーチ補佐を伴い…

ゴメス「監督からも右肩が下がって、下からバットが出ている。もっと上から叩け-と言われているが、なかなか出来ない。どうすれば右肩が下がらずに振れるのか、教えて欲しい」

掛布DC「右肩を意識するんじゃなく、右の軸足を意識した方がいい」

ゴメス「肩ではなく足を?」

掛布DC「君は踏み込んだときに軸足の右膝が極端に折れている。だから右肩が下がるんだ。ボールを迎えにいって打つんじゃなく、右の軸足にウエイトを乗せ、ボールを体の近くまで引きつけてから踏み込んでごらん。右膝の折れも少なくなり、肩も下がらなくなる。コツは構えたとき、右の太ももに自分の体重を感じさせてあげることだ

※引用元:ゴメスを変えた掛布DCの「一言」、ゴメスは帽子をとり、深く礼をした – ライブドアニュース(2014/05/03 09:20)

野球のバッティングと剣道の打突における相違点(右打者の構えと中段の構えでは左右の足の前後関係が逆になる、構えの方向性が90°異なる、バッティングが円運動主体であるのに対して打突は直線運動主体、など)には留意しなければなりませんが、この掛布氏のアドバイスは剣道にも大いに通じる部分があり、剣道指導への応用が利くように思えました。

まず、掛布氏のアドバイスですが、右打者であるゴメスのバッティングの際に右肩が下がるという悪癖に対するものでした。その結果、下からバットが出て軌道が長くなり、球速の変化に対応できません。

方向性が90°異なる剣道の打突に当てはめますと、打突の際にやや後傾姿勢となる悪癖に相当します。その結果、剣先が浮つき気味になって起こりが見えやすくなるのと同時に、ムダな体重移動が生じて打突が遅れます。

掛布氏はゴメスの悪癖の主因が、軸となる右脚のヒザが折れ過ぎていることにあると看破し、「右の太ももに自分の体重を感じさせてあげる」とアドバイスすることにより悪癖を修正。
その後のゴメスの大活躍は素晴らしく、5/7現在で打率.331(6位)、打点34(1位)、本塁打5(12位)と、鳴かず飛ばずだったオープン戦からは信じられない好成績を挙げてます。

これを剣道に当てはめますと、打突の際にやや後傾姿勢となる悪癖の主因は左脚のヒザが折れていることにありますから、”左の太ももに自分の体重を感じさせてあげる”というアドバイスが効果を発揮するかもしれません。

この「太ももに自分の体重を感じさせてあげる」という掛布氏のアドバイスは、そのまま剣道の「左脚のひかがみを張る」という指導と直結するように思えますが、いかがなものでしょうか?

膕(ひかがみ)とはヒザ裏の窪みのことを指します。
日本語として絶滅しかけている言葉なのでピンと来ない方が多いと思いますが、「ヒザ裏」ではなく「ヒザ裏の窪み」であることが重要。

椅子に座るなど、自分のヒザが90°に曲げられている状態でヒザ裏を触ってみると、ヒザ関節の上側(太もも側)が凹んでいることを確認できます。
これが膕(ひかがみ)です。

そのままヒザを伸ばしていくと、その凹みが徐々に盛り上がって無くなりますので、その状態で立ち上がり、太ももに体重を載せると膕(ひかがみ)が張った状態になります。
これが「ひかがみを張る」と呼ばれる状態です。

ただし、ヒザを伸ばしきってしまうと、太ももに体重を載せる載せないに関わらず膕(ひかがみ)が張られたままの状態となってしまい、「ひかがみを張る」というコントロールが利きません。

以上のように、「ひかがみを張る」という指導は実に具体的で的確な指導なのですが、残念ながら膕(ひかがみ)という単語が一般的に通じるものではない上に、直に触ることでようやく体感できる鈍感な部位でもありますので、私自身の経験上も含め、なかなか効果を発揮していないのが実情かと思います。

これに対し、掛布氏の「太ももに自分の体重を感じさせてあげる」という指導は、どうすれば「ひかがみを張る」ことが出来るのか?まで踏み込んでおり、通訳を介しても伝わるほど簡易な表現による、実に体感的な指導であるという点で、とても優れています。

どうも剣道人は、先人が残してくれた短い言葉による教示を分解して噛み砕かないまま鵜呑みにしている傾向がありますよね。(もちろん私も含めて)

禅問答のように自力で答えを導き出させるという狙いもあるのでしょうけれども、とくに少年剣道の場合は、より簡易な言葉を伴う体感的な指導が必要ではないでしょうか?

野球と剣道、プロと少年指導、フィールドも対象も異なるけれど、掛布氏の慧眼と伝える言葉は、指導者として見習わなければと思いました。

カープファンとしてはゴメスの活躍は痛いのですけどね。A^^;


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