平成31年初場所総括

恒例、大相撲初場所の総括でございます。

今場所は稀勢の里の進退を話題の筆頭として初日を迎えたわけですが、ご案内のとおり、稀勢の里は初日から三連敗を経て休場、引退して年寄・荒磯を襲名しました。

長年、私は稀勢の里を軸に相撲を観て参りました。
休場した場所も、無意識のうちに土俵上の各力士と稀勢の里が対戦した場合のifを考えつつの相撲観戦だったのでしょうか、稀勢の里の引退後、相撲観戦後の疲労感が無いのですね。

肩の力が抜けた感じのリラックスを自覚する中、高安に観戦の軸を置きつつもニュートラルな視点で相撲を楽しめました。

稀勢の里ロスは引退相撲を経た頃にズシっと来るのではないかと。
たぶん、稀勢の里引退という事実は受け入れながらも、実感がまだ湧かないのです。


さて、今場所は総評から。
休場者多発の件から述べねばなりません。

関取の休場者なしで初日を迎えたのですが、稀勢の里(引退)、鶴竜、白鵬、栃ノ心、御嶽海(再出場)、千代の国、琴勇輝、隆の勝、千代の海、常幸龍、以上10名もの関取が途中休場。

関取70名中の10名、そして役力士10名中の5名が途中休場。

誰の目にも異常事態に映ると思うのですが、八角理事長や阿武松審判部長から対策を講じる趣旨の発言が聞こえてこず、とてもモヤモヤしております。

やはり公傷認定方法を改めた上での公傷制度復活が必要だと思います。
番付降格の無い横綱も、公傷認定を受けることにより出場圧力から逃れての治療に専念できることになりますから、やはり必要なのです。

また、力士の大型化に伴い、土俵の仕様を見直すべきだと思います。

や、土俵円の形状は相撲競技そのものへの影響が大きいので変えられません。

しかし、盛り土の高さが「落ちる」と表現するに相応しい高さであること、徳俵と角俵の間(プロレスで言うところのエプロンサイドの一番狭い部分)が50cm程度しかないこと、といったあたりは改善余地があるでしょう。

単純に、土俵が低ければ土俵下に落ちた際のダメージは減りますし、土俵円の外側が広ければ土俵下に落ちずに済むケースが増えますからね。

土俵のすべり具合も、摩擦係数や水分含有量などの数値仕様を定めることで一定の範囲内に収まれば、想定以上に足が流れてヒザから落ちるなどのケガが減るでしょう。

4本柱を廃して吊り屋根にしたことに比べれば大きな変革ではなく、今すぐにでも取り組んでほしいものです。


相撲内容的には淡白な相撲が多かったように思えます。

これも途中休場者多発により、通常であれば組まれない筈の番付差のある取組を組まざる得なくなったことが一因と言えます。

番付というランキングを適正に運用するためにも、休場リスクの低減は喫緊の課題であるはず。危機感が見えない日本相撲協会執行部は認識を改めてほしいと切に願ってます。


力士評は贔屓の高安から参ります。

場所の直前にインフルエンザ感染。初場所の大混戦を考えると痛恨事でした。

私もインフルエンザに感染し、初日から五日目まで仕事も剣道も休む羽目に遭いましたけれども、治療薬投与によって熱はすぐ下がるものの、伝搬防止期間の安静を経て剣道の稽古に復帰するも筋肉が緩みきってしまっていて、万全を100とするなら60くらいの力と機能しか発揮できないのですよ。
高安も同様、いや、剣道と違って直接コンタクトする相撲の競技特性、その中でも高安がパワーファイターであることを考えれば、インフルエンザ感染によるパワーダウンは私の比ではなかったでしょうね。

結果的に、序盤2勝3敗、中盤3勝2敗、終盤4勝1敗と徐々に相撲内容を整えるも優勝争いには間に合わずの9勝。大阪での奮起を願ってます。


優勝した玉鷲について。

序盤で貴景勝と御嶽海の2人に2敗してましたので、六日目からの連勝を経て優勝争いに急浮上したのには驚きました。世間の目は十日目まで土付かずだった白鵬と、先場所優勝した貴景勝に注がれてましたから、サブマリンのごとき急浮上に感じました。

左右のおっつけが印象的。稀勢の里が引退した今、対戦相手が脅威に感じるおっつけの使い手は玉鷲くらいなものでしょうが、今場所のようにハマると対戦相手は対処のしようが無いでしょうね。

34歳2ヶ月での初優勝は旭天鵬の37歳8ヶ月に次いで2番目の年長記録。
所属する片男波部屋としては1971年名古屋場所の横綱玉の海以来48年ぶりの優勝。
さらには優勝した日の朝に第二子誕生。
この優勝は、入門して以来休場することなく30歳を超えてブレイクした苦労人に対する相撲の神様からの粋な計らいのように思えてなりません。

その意味では旭天鵬の最年長優勝と重なる思いがしますけど、大相撲はしばしばこういうことが起きるから面白いのですよね。


次は技能賞を受賞した貴景勝に移ります。

初日から十四日目まで貴景勝の相撲を貫いてました。
や、優勝した先場所よりも相撲内容は進化してました。それは決まり手に表れてます。

先場所は叩き込み×3、突き落とし×3、引き落とし×1といった具合で、13勝のうち実に7勝までもが叩き落とし系だったのに対し、今場所は対戦翌日から休場することになった白鵬が自滅的に引き落とされた一番を唯一の例外に、押し出し×9、突き出し×1、つまりは11勝のうち10勝までもが相手力士に土俵を割らせての完勝だったのです。

これは、立合でバチンと弾いて間合が生じたところを強烈な左で叩き込むor突き落とすとしていた先場所の貴景勝を対戦相手が研究して対応策を講じて臨んだ今場所で、それを上回る進化を遂げての11勝、ということを示してますから、千秋楽結びの一番にて大関・豪栄道を相手に同様の相撲を見せてくれさえすれば、勝敗に関係なく大関に昇進させるべきだと思っておりました。

が、その大事な千秋楽結びの一番でまともに引いてしまい、あっという間に押し出されてしまいました。

相手が不調の豪栄道というのも印象を落としましたし、星取表で振り返れば同じく不調で優勝争いに絡めなかった高安にも完敗。栃ノ心、鶴竜、稀勢の里とは対戦できず。これでは大関昇進の気運が急速に萎んでしまうのも当然で、諦めるほかありません。

しかしながら先場所13勝で優勝、今場所11勝で2差ながら優勝次点なのですから、来場所は明確に大関昇進が懸けられます。私の個人的見解としては、引いて墓穴を掘る過ちを繰り返さなければ、9勝でも大関に昇進させても良いのではないかと。

稀勢の里や豪栄道を関脇で完熟するまで待ったことが、結果として彼らに良くなかったという事実も無視できません。
東の関脇の地位にある力士が大関と比較して遜色ない力を示したならば躊躇せずに大関に上げないと、横綱になり得る格が育ちにくいのではないかと思うのです。

貴景勝は大関の地位で大きくなるところを観たい力士です。


殊勲賞を授賞した御嶽海について。

高安以上にifを考えてしまうのが今場所の御嶽海でした。
六日目の妙義龍戦で左ヒザ上部の腱を故障し、翌七日目を不戦敗として中日から3日間の休場となりましたが、もし故障が発生しなければ優勝したのは御嶽海だったかもしれないと思わされるほどに、相撲内容充実の序盤戦でした。

5勝2敗3休から勝ち越す、ましてや初日から10連勝中の白鵬に、どう見ても無理を押しての出場と思える御嶽海が勝つなんて思いもよりませんで、御嶽海の三役を死守する様に戦慄を覚えました。

とはいえ、これを美談にしてはいけないと思います。
これを美談とする風潮が、稀勢の里の引退ロードを茨の道にしてしまったことの反省が活かされていないように思え、憂慮せずにはいられません。

御嶽海の故障がより軽いものであることを祈ります。


三賞選考について。

貴景勝に技能賞。前述したとおり、相撲内容の格段の進化がありました。
御嶽海に殊勲賞。途中休場も3横綱を倒しての堂々たる殊勲賞。
玉鷲にも殊勲賞。対戦した1横綱3大関に全勝しての堂々たる殊勲賞。
玉鷲に敢闘賞。関脇で初優勝。これを敢闘と言わずに何を敢闘と言うのか。

と、いった具合に文句なし100点満点の三賞選考でした。
毎場所この調子でお願いしたいものです。


ほか、思い付くまま短評。

北勝富士が9勝6敗で来場所の新三役がほぼ確定。
2つの不戦勝という幸運もあるけれど、先場所のような取口の迷いが一切出なかったのが良かった。

6勝9敗と負け越した栃煌山。
何度かTwitterで苦言を呈したけれど、あの遅すぎる仕切りは許しがたい。
相手力士は元より、行司も合わせるのに四苦八苦させる手前勝手な立合の仕切りを、なぜ審判部が放置しているのか理解に苦しむ。

魁聖、遠藤、阿炎が10勝を挙げ、春場所は幕内上位に戻ってくると思うと嬉しい。

豪栄道はすっかり稽古番長が定着してしまった。
あの充実の稽古ぶりからなぜあの本場所の不安定極まりない相撲になるのかサッパリ分からない。稽古番長ぶりから重篤な故障とも思えないのだけど。

白鵬、鶴竜、栃ノ心、琴勇輝、千代の国は無理せず治療に専念してほしい。
無理して途中休場を繰り返すという失敗は稀勢の里を最後にしたい。

宝富士が昨年初場所以来となる丸1年ぶりの勝ち越し。
先場所まで4場所連続の7勝8敗には呪われてるとさえ思ってしまった。
でもまだ万全ではなく、左四つの生命線である左腕の完全復調を待ちたい。

琴奨菊が6勝9敗とは意外な感じ。元気の良い相撲を見せてくれていたのだけど。
牛久の赤鬼が引退した今、柳川の石臼には1日でも長く相撲を取ってほしい。


インフルエンザの影響で空白期間もあったのですけど、テレビ桟敷に居座る機会もわりと有って、とても楽しめた初場所でした。

いつものごとくまとまりを欠きますが、以上を平成31年初場所の総括とします。




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Comment (1)

  1. shin2

    相撲協会公式ツイッターの三賞力士の写真が面白い。
    >>https://twitter.com/sumokyokai/status/1089772638694567936
    相変わらず「クソリプ」とやらがオマケに付いてくるのは閉口するが、絵に描いたような「三者三様」だ。
    貴景勝の無愛想も板に着いてきた。もうこのままのキャラで行こう。

    >>稀勢の里や豪栄道を関脇で完熟するまで待ったことが、結果として彼らに良くなかったという事実
    稀勢の里は関脇10場所・小結12場所、豪栄道は関脇15場所・小結4場所のキャリアを経て、大関に昇進した。相撲協会は「功労賞」的な昇進がお好みなのかも知れないが、若い力士を昇進させないと、白鵬が第一人者のバトンを渡す相手がいなくなる。
    また、貴景勝のような、175㎝の短躯の突き押し相撲を審判部が高く評価していないのではないか。私の邪推であればいいのだが「大関にあげたくない」空気を感じた。

    >>土俵の仕様を見直すべきだと思います。
    NHKが大相撲のテレビ中継を開始して60年余り、カメラワークとか確立されたものがあるはずだ。
    NHKとの折衝が必要となろう。その中でより良い案が出る可能性もある。

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