足の拇指球を意識する意味
足の拇指球(親指の付け根のふくらんだ部分)を意識するという指導は、立ち姿勢で行われるスポーツ競技全般でほぼ共通する指導ではありますが、それゆえに他競技での指導内容が混在しやすく、剣道の特性を置き忘れた指導にならないように留意せねばなりません。
あ、いつもの自己反省であります。A^^;
相撲の立合は両足を逆ハの字に開き、右足から出る場合は左足の拇指球で地面を押すことによって、100kgを悠に超える巨体を瞬時に突進させることを得ております。
この相撲の立合がスピードスケートや陸上の短距離走でのスタートに応用され、効果を得て普及し、今は独自の形に進化してますが、わりと有名なエピソードとして知られていることです。
これと同じ流れで、剣道でも踏み込み足を使う際に左足拇指球を意識させる指導をすることがありますけれども、相撲は素足で土俵、スケートはエッジ(刃)で氷、陸上短距離はスパイクで特殊舗装路、いずれも地面を噛むことができるのに対し、剣道は素足で板の間ですから地面を噛むことは出来ません。
なので、剣道の踏み込み足で他競技のそれとそっくり同じことをしてしまうと、左足拇指球付近のみにマメを作ったり、剣道専用道場の床などのような摩擦係数の低い床での稽古や試合で足さばきが不安定になったりします。
剣道の場合、足の拇指球で作る足裏の凸やエッジやスパイクなどで地面を噛むことができない代わりに、床と足裏の接地面積をなるべく大きく取ることによって推進力を得る必要がありますので、足の拇指球に対する意識は「常に接地させておくこと」といったあたりが正解であるように思えます。
実際に剣道の足の構えを作ってお試しになれば分かると思うのですが、足裏の親指側(インサイド)だけを床から離すことはできても、小指側(アウトサイド)だけを床から離すことは無理が生じるのですよ。
つまり、足の親指側さえ床から浮かさないように留意しておけば、足裏は五指の付け根全体が床との接地を得ることになり、最大限の推進力と足さばきの安定に寄与するのではないかと。
この理解が正しいか否かはこれからの稽古が示してくれるでしょう。
はい、偉そうなこと書きましたが、なんのこたぁない、私のこれまでの左足拇指球の使い方は、剣道の特性を置き忘れていたものだったということです。
でも、このような試行錯誤を楽しむのも剣道の醍醐味であります。