夏場所を彩った力士について

夏場所総括その3。これで締めくくり。


昨日(5/31)大関昇進が伝達された高安について。

序盤から中盤における立合の強烈な当たりと平幕力士への勝ちっぷりが観衆の記憶に焼き付き、加えて大関昇進基準とされている33勝を超え、さらには横綱の日馬富士に勝ったことから、大関昇進については疑問の余地など微塵もありません。

しかしながら、平幕の正代に対する1敗に不満があるのと同時に、今後の課題が表れているように思えます。

胸から当たっての両差し狙いの正代ですから、高安は安心して体当たりからのかち上げで弾くいつもの立合ができる筈なのですが、序盤中盤の平幕力士のようには正代は弾かれませんで、中途半端に残った間合に突き押すか四つに組むか決めかねてしまい、理もへったくれもない上手投げが正代を呼び込んで負けたという相撲でした。

課題の1つは、高安の金看板である立合の当たりの強さが、終盤になって落ちているのではないかということ。大関昇進後は終盤戦に役力士との対戦が集中しますから、もしそうであるなら大きな課題になります。

もう1つの課題は、突き押しと四つ相撲のどちらを選択するかの判断が曖昧で、正代戦のように一旦悪い流れになってしまうと堪えることができずに悪手を重ねてしまう傾向があること。

ただ、課題がこれだけ明らかな形で出ているので、対策を万全にして新大関として迎える名古屋場所に入れると思いますから、平成18年夏場所の白鵬以来となる新大関優勝の可能性も少なからずあるであろうと言うことが出来ます。ガンバレ高安。


日馬富士について。

両足首の故障を筆頭に満身創痍の横綱であるのは周知のことであるけれども、10日目までの神速の立合を軸とした久々に見せる「らしい」相撲に完全復活?とも思ったものですけれども、終盤に入ってからの凋落は目を覆わんばかりの惨状でした。

終盤の4戦全敗(不戦勝1)は全て立合負け。
神速の立合が看板の横綱が立合で負け、相撲の流れを相手に譲ってしまっては、それを自分に引き戻す力が今場所の日馬富士には無いということでしょう。

ただ、序盤中盤において幕内で1番の相撲内容を示していたのは間違いなく日馬富士であり、序盤中盤における土俵の盛り上がりを楽しんだ身として、それを忘れてはなりません。

左が使えずにバタバタした相撲を取るしかない稀勢の里。立合の駆け引きに腐心するばかりの白鵬。そんな状態でなぜ出てきた?というような相撲を残して序盤で休場した鶴竜。
彼らが等分に背負うべき横綱の務めを1人で背負った日馬富士の姿は賞賛に値します。


照ノ富士について。

平幕力士に対しての2連敗で始まり、12日目の正代戦で左ヒザの故障再発が露見したことを考えると、12勝3敗という成績は上出来どころか奇跡的とさえ言えます。

ただ、相撲内容を振り返りますと、千秋楽の高安戦で見せた閂に極めて左右に振る等の、それをやっちゃヒザに負担でしょうに…と言いたくなる相撲をガマンできずにやっちゃうんですよね。

優勝するのが先か、ヒザがパンクするのが先かという状態で優勝したとしても、ヒザの不安を抱えたままでは横綱昇進への道筋は描きづらいものがあります。
なんとか寄り身の相撲へ転向できないものでしょうか。


豪栄道について。

まずはカド番脱出おめでとう。5回目でしたっけ。

それでも今場所はクンロクという星数にしては良い相撲内容が多く見られました。腰の位置が常に低く、立合の鋭さも戻ってきた感があります。

遅きに失したと言われるかもしれませんが、今後は大関の看板に相応しい豪栄道が観られるのではないか?と期待できる予兆が感じられた夏場所でした。


殊勲賞の御嶽海について。

4日目~9日目までの6連敗を経て勝ち越すとは思いませんで、驚いてます。

その要因としては、御嶽海独特のピタっと磁石のように貼り付く寄り身を苦手に感じている上位力士が少なからずいるということかと。

来場所は新関脇。当たりを強くして新関脇場所を迎えてほしいものです。


敢闘賞の阿武咲について。

新入幕で二桁=10勝はお見事。相撲っぷりもよろしく、充分に敢闘賞に値します。

ただ、新入幕力士にかける言葉として相応しくないかもしれませんが、今場所は無我夢中で押して押して押しまくってたら二桁勝っちゃったという感じで、押し相撲にしてもあまり戦略が感じられないのですね。

来場所は上位とも当たる番付まで上がるかもしれませんので、押し相撲に工夫と戦略を重ねることで番付に跳ね返されないように頑張ってほしい。


技能賞の嘉風について。

やるじゃないの三賞選考委員。8勝7敗の嘉風によくぞ技能賞を与えてくださいました。良き前例となりますように。

嘉風が今場所に示した技能の巧みさを語るのも今更なことですが、左差しからの攻めの速さ、おっつけ、ハズ押しによる波状攻撃、よくまぁ35歳という年齢でこの相撲を維持できるものだと感心するばかりです。

残念ながら上が詰まってますので来場所も小結に留まりますが、これからも幕内上位戦をかき回してほしいです。


三賞から漏れた11勝の貴景勝と宇良、12勝の栃ノ心について。

正直な話、阿武咲よりも貴景勝の方が良い印象に映っていたので、敢闘賞から漏れたのは残念に思ってます。今場所は突き押しに進歩が見られました。

宇良については評価の難しいところですね。立合に策が立ちすぎるような気がします。
とくに千秋楽で見せた下がる立合はダメ。昔、舞の海が1度やってお蔵入りしましたけれども、さすがに周囲から指導されるのではないでしょうか。

栃ノ心、腕力にものを言わせる四つ相撲が復活したことは喜ばしいのだけど、これだけ好調を思わせる状態でありながら注文相撲を2回も見せられたのには興醒めしました。三賞から漏れたのも当然です。


以上、夏場所総括でした。




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