実況不在の報道

例えば、野球でバッターがストライクを見逃したとしますよね。

それをラジオの野球中継で実況アナウンサーが伝えるのに「ストライークッ!バッター手が出ませ-ん!」てのと、「ストライク。バッター悠然と見送りました。」とでは大いに異なるでしょ?

でも、実況アナウンサーに求められるべきは「手が出ない」とか「悠然と」みたいな主観ではないのです。

極端な話「同点の9回裏2死満塁で4番が3ボールからの絶好球を見逃した!」てのと、「プレイボール直後、先頭打者が初球を見逃した。」では天地の差なわけで。

なので、実況アナウンサーに求められるべきは、球種と球速、コース、ストライク/ボール/アウトのカウントや、走者の有無、ピッチャーとバッターの相性、前の打席の結果、直近の成績、というような「ストライクの見逃し」という事実を補完するデータの提示なのです。

で、その「ストライクの見逃し」の価値判断こそが聴取者の楽しみであり、それを補う役割をするのが解説者なのですよね。

まあ、上記の例はあくまでも架空の話であり(むかし懐かしい上岡龍太郎のネタw)、実際のプロ野球ラジオ中継はしっかりと役割を果たしている実況が多いのですが、昨今のニュース報道は実況と解説があまりにもゴチャ混ぜだと思うのです。


上岡龍太郎のネタそのままに、ひいきのチームが守りのときは「ストライークッ!バッター手が出ませ-ん!」で、ひいきのチームが攻撃のときは「ストライ久バッター悠然と見送りました。」みたいな報道ばかりなんですよ。

プロ野球の場合、地元チームびいきな実況もまた楽しいのですが、ニュース報道の場合、事実を核にしたウソが伝搬されるので迷惑でしかありません。

実況もそこそこに「許せませんね」とか主観を述べるキャスターやアナウンサー。
実況と解説の2役が求められるのに結論ありきな実況をするジャーナリスト。
まったくの門外漢なのに訳知り顔でトンチンカンな解説をするコメンテーター。

これらは昔からテレビやラジオで著しいものがありますが、最近はメディアを問わず、紙媒体でも電子媒体でも同様であると言えます。

おかげで受け取るこちらは常にマユツバでの裏取りや比較が習慣付きまして、最近はメディアの偏りを”芸”として楽しめる域にまで達しましたけれども、こんなこと強いられるのは疲れるんですよね。

今、ニュース報道に必要なのは優秀な実況です。
理路整然と事象を積み上げ、確度を測り、優先順位付けして情報提供し、自らは私見を挟まずに、その価値判断は受け手に任せる実況が必要です。

そもそもアンカーパーソンとはそういう存在なのでしょ?
何事につけても混沌としている今、まさに必要とされてますよね。出てきてほしいと切に願ってます。

※旧ブログ記事を焼き直しました




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