鈴木貫太郎の弔意

11月25日に90歳で死去したキューバのフィデル・カストロ前国家評議会議長が埋葬されたそうで。
カストロ前議長の逝去の報を受けた際、米国新大統領に決定しているトランプ氏を筆頭として悪し様に罵る政治指導者が少なからずいるのを聞き、私の脳裏に鈴木貫太郎が浮かびました。

鈴木貫太郎は日本を戦争終結へと導いた戦中最後の首相なのですが、千葉県は関宿(現・野田市)の人なので、茨城八千代からもクルマで30分くらい走れば鈴木貫太郎記念館に着いたりするご近所の偉人です。

海軍大将だった鈴木貫太郎は「軍人は政治に関与せざるべし」として自らも政治に関わることを拒んでいたものを昭和天皇に請われる形で断る術もなく首相の任に就くのですが、その就任直後に戦争相手国であるアメリカのルーズベルト大統領が急逝しました。1945年4月のこと。

すでに戦争は敗色濃厚で前月には東京大空襲があったという状況下。
日本国民の敵国である米国への怨嗟の念は極限まで高まっており、鬼畜米英と罵る声も強まる中で、鈴木貫太郎首相は以下の談話を世界に発信します。

「今日、アメリカがわが国に対し優勢な戦いを展開しているのは亡き大統領の優れた指導があったからです。私は深い哀悼の意をアメリカ国民の悲しみに送るものであります。しかし、ルーズベルト氏の死によって、アメリカの日本に対する戦争継続の努力が変わるとは考えておりません。我々もまたあなた方アメリカ国民の覇権主義に対し今まで以上に強く戦います」

敗戦目前まで追い詰められていたドイツのヒトラー総統が口を極めて罵倒したのとは対照的であり、諸外国の対日感情が悪化していた最中であるにも関わらず、鈴木貫太郎首相の姿勢は驚きを伴なって国際的に高く評価されたのでした。

もちろん「死ねば悪人も仏」とする日本の文化が背景にあってのことではありますが、時代背景を考えますと鈴木貫太郎個人の資質に依るところ大と言えます。実際、ドイツから抗議を受けて青年将校が詰問に訪れたのですが、鈴木貫太郎首相は「日本精神の一つに『敵を愛す』というのがある。その精神に則ったまでです」と一笑して受け流したとのこと。出来そうで出来ないことですけれども、見習いたいものです。

さて現代に戻りますが、カストロ前議長は軍事クーデターを経て社会主義国家キューバの独裁的政治指導者として君臨してましたから、自由を求めて亡命したキューバ人を筆頭に強い恨みを抱いている人々は多数存在します。

その一方で、ソ連や中国の政治指導者のように私利私欲に走ることなく(少なくとも表面上は)清貧に甘んじつつ社会主義国家の理想を求めた強烈なリーダーシップとカリスマ性は高い評価に値します。

時代背景が異なりますから鈴木貫太郎と同等の称賛は与えられませんが、安倍首相の談話はバランスが取れていてよろしいのではないかと。以下、カストロ前議長への弔意を表す安倍首相の談話。

 キューバ革命後の卓越した指導者であるフィデル・カストロ前議長の逝去の報に接し、謹んで哀悼の意を表します。
 本年9月に私がキューバを訪問しお会いした際には、世界情勢について情熱を込めて語られる姿が印象的でした。
 日本政府を代表して、キューバ共和国政府および同国国民、ならびにご遺族の皆さまに対し、ご冥福をお祈りします。


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