剣道の段位は升みたいなもんです

私が剣道やってることを知られますと、九分九厘同じ質問を投げられます。
何段ですか?

隠しておくことでもないので五段と正直に答えるわけですが、剣道に関わりの無い方ほど「すごい」と言ってくださいます。

ちっともすごくないのです。自分の実力の程は自分が一番よく分かってます。
かといって完全否定しても話がくどくなるだけですので、謙遜に思われるような仕草で「いえいえそんな」と煙に巻くのが常だったりします。

たしかに段位は剣道の技量や強さの指標という性格が強いのですが、「段位=強さ」とは言い切れないのが実情です。

だって、降格がありませんからね。
例えば、今の私は右手首の腱断裂で稽古不十分ですから、五段取得時の半分も力が出せない状況にありますが、だからといって五段を召し上げられて四段や三段に降格するようなことはないわけです。仮にこのまま竹刀を置いて剣道から退いたとしても五段のまま。

その一方で全日本剣道選手権で優勝するような五段もいるのですから、「段位=強さ」とは言い切れないのです。

では、段位とは何か?と問われるならば、「格」とでも言えばしっくりくるかもしれませんが、つまるところ剣道の器の大きさの公認なのですよ。

最初は、初段審査で基本中の基本を修めたことを認められると「初段」という升(ます)を渡されまして「まずこの升を満たせるだけの力量が得られるように修行なさい」と言われるわけです。

次の二段審査では、初段の升に剣道の技量がなみなみと満たされているかを審査され、それが認められると「初段」より一回り大きな「二段」という升を「次はこれを満たしてごらん」と渡される。

こんな調子で三段、四段を経て、今の私は五段の升まで頂いているわけですが、残念ながら先述したような事情により、私の五段という升には半分くらいしか入っておりませんで、早いとこ右手首を完治させて稽古量を取り戻し、五段という升を満たす力量を取り戻さなければなりません。

対して、全日本剣道選手権に出場するような四段や五段は、年齢制限により段位を留め置かれているだけの話。
どこかで書いたような気もしますが、初段審査の受審資格が満13歳にならないと与えられず、二段以降は前段位取得後に義務付けられている修業年数の関係により、四段は19歳、五段は23歳、六段は28歳にならないと取得できないのです。

全日本剣道選手権に出場する彼らの升は満たされているどころじゃなく、仏様にお供えする御膳のごとくテンコ盛りでして、同じ升を持ちながら半分も満たしていない私などは相手にもならないくらいの力量差があるのです。

また、市井の剣道家の中にも、段位にこだわらず「その力量にその升では小さすぎるでしょう」と言いたくなる段位のままでいる方もおられます。

というわけで、剣道の段位だけで「すごい」とは思わないで頂きたいですし、段位が高い先生が「えらい」とは限らないのです。

私としては、升の大きさに関わらず、いつも升を満たしている人を「すごい」と尊敬します。稽古を日常として精進しておられる証拠ですからね。社会人の身でそれを為すのは並大抵のことではないのです。

え?私? 升の中身は安定しませんね。満たしたり枯らせたり。A^^;




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Comments (2)

  1. kanimimi

     的確な表現故に
    耳の痛い話だにゃぁ…

     kanimimi さんの中の人である、
    市井において善良な会社員(笑)であるワタクシは、
    柔道弐段/某古流武術の四段を頂いております。

     柔道の弐段においては
    甚之介さんの仰る通りで好(悪)例で、
    弐段の升頂いておりますが
    『25年位前はナミナミ入っておりましたが…』
    『升… どこやったっけwww』
    という体たらく。(苦)

     升の充実度では、
    初段頂いた当時(14歳頃)が
    一番だったかなぁ…と。
    年齢制限の壁で…という意味で、
    柔道も剣道と同じですからね。

     例の日曜日の活動(古流武術)も、
    四段頂いてから7年程稽古には
    満足に参加できない状態ですから…。

     今回の記事は、
    帰宅時に すんまふぉ で読ませて頂いたのですが
    私の【升】はどうなっているんだろうなぁ と、
    自分の事なのに人に尋ねたくなりました。(失笑)

    Reply
    1. 甚之介 (Post author)

      kanimimiさん、コメントありがとうございます♪
      遅レスですいません。

      私にとっては書道の【升】がそんな感じですね。
      どこいったんだろ? A^^;

      Reply

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