初場所総括

本場所千秋楽後の恒例記事でございます。
大相撲初場所の総括をしたいと思います。


何はともあれ、大鵬が持っていた幕内優勝回数最多記録を白鵬が全勝優勝で更新した件から書かねばなりません。

私がアンチであることを差し引きましても、中盤節目の十日目を終えた時点でも白鵬が全勝優勝するとは思えませんでした。五日目の勢戦、七日目の高安戦と、土俵際で足が流れる相撲が目立ち、その2番に挟まれた六日目の遠藤戦では心の乱れを感じましたので、その穴によって役力士と当たる終盤に入ってから崩れるだろうなという見解でした。

が、しかし、今振り返ってみますと、九日目で逸ノ城を相手に横綱相撲を取り戻した感があります。

この取組、立合で当たり勝ったのに叩きにかかるあたりまでは五日目から七日目の相撲で感じた脆さが表れているのですが、組み止めてからの相撲はまさしく盤石。これ以降、立合の良化はあまり見られないものの、不利な体勢から抜群の対応力で盛り返し、いつの間にか自分十分の体勢を得て白星を積み上げていく様子には、連勝記録更新時に近い強さを感じざるえませんでした。

危機らしい危機は十三日目の稀勢の里戦で土俵際にて食らった小手投げに同体取直しとなった一番くらいなもので、それとて稀勢の里が相撲内容で勝ったわけでもなく、今場所は白鵬が史上最多となる幕内優勝を全勝で飾り、それも優勝次点の力士と4差を付けてのぶっちぎり優勝ときては、アンチ白鵬の私と言えども両手を挙げて褒め称えるほかございません。


その代わりと申しては何ですが、他の力士に叱咤激励を飛ばさねばなりませんね。

私、思うのですが、白鵬の抜群な成績があまりにも輝かしいあまり、他の力士が白鵬の自在性に追従し過ぎているように思えてならないのですよ。とくに鶴竜、稀勢の里、豪栄道、勢、隠岐の海といったあたり。

突いてよし、組んでよし、投げてよし、寄ってよし、そして立合の駆け引きといったものは白鵬の柔軟性と相撲センスに依るものであり、それと同じ道を歩んだところで白鵬を超えることはできないのですよ。鶴竜ならば差し身の上手さ、稀勢の里なら左四つからの寄り身とおっつけを活かした押し相撲、それぞれに現在の地位まで自身を押し上げた個性があるのですから、白鵬を研究する以前に魅力ある個性を磨きまくりませんとね。

その意味では日馬富士が未だ両足首その他コンディションの整わないことを残念に思います。日馬富士はスピードという自身の個性を最大限に発揮することに務めておりますし、その土俵入りは白鵬とは明確に異なる道を歩んでます。ただ、万全の状態になかなか戻らないだけ。とても残念です。


さて、贔屓の郷土力士、稀勢の里でありますが、今場所も「大関としては及第点」という評価が精一杯の場所となってしまいました。さて、どうしたものでしょう。

ただ、立合は若干ながら良化したように思えます。
今場所は深夜場所に頼ってばかりおりましたので「待った」の頻度や対戦力士との合気はあまりよく分からないのですが、立合の形はともかく迷いは従来より見えなくなりました。今後は立合そのものをより良い形にしていってくれたなら、課題は解消するものと思ってます。

なお、課題とは序盤と中盤の取りこぼし解消。
先場所もそうでしたが、序盤と中盤に1敗づつ落とし、ビハインドを背負って終盤戦に突入しているうちは、賜杯が近付くことは難しいでしょう。今場所の場合、同じ大関の琴奨菊への敗戦を「星を落とした」と表現するのは失礼なのですが、琴奨菊の十四日目と千秋楽の相撲を思い起こしますと、この琴奨菊に負けているようじゃいかんなーと思わざる得ないのです。

でも、まー、そうは言っても役力士以外では照ノ富士にしか負けなかったわけで、課題も解消しつつあると信じて待ちます。待つのは慣れてますので。


琴奨菊と豪栄道の角番脱出は書かなくても良いでしょ。
その事実が「よかったねー」としか言えませんもん。琴奨菊は少しでも故障を治してほしいし、豪栄道は早く強烈な立合を取り戻してほしい。九州と大阪場所用のご当地力士扱いに悔しいと思ってもらわないといかんですよ。


照ノ富士は充実の序盤戦から二桁いくと思ってましたので、千秋楽勝ち越しに驚いてます。脳裏に焼き付いているのが六日目の魁聖戦。右四つがっぷり組んでの寄り負け。ただ上手を取るだけじゃダメなんだってことを魁聖が教えてくれましたし、まだまだ照ノ富士も荒削りなんだなーとも思いました。

その照ノ富士が敢闘賞を受賞したわけですが、8勝7敗の力士に敢闘賞を与えた選考委員(審判委員+記者)には拍手を贈りたい。


しかしながら、今場所もやはり三賞の選考には大いに問題があると言わざる得ません。今場所は殊勲賞と技能賞が「該当者なし」とされました。

横綱に勝った関脇以下の力士(宝富士・栃煌山・常幸龍・碧山)が全員負け越したので、結果的に殊勲賞なしというのは仕方ありません。しかし、千秋楽77の宝富士と栃煌山に対して「勝てば殊勲賞」の声が掛からなかったことには疑問を感じます。

また、技能賞に関しては、直近の1年間では昨年秋場所で安美錦に授賞されたのみで、ほか5場所は「該当者なし」という有様で、選考責任を果たしているのか?という疑問は強まるばかりです。

過去の記事で何度か書いていることですが、あらためて述べます。

横綱に勝った力士が勝ち越せなかった場合は殊勲賞の「該当者なし」は仕方ないものとして、敢闘賞と技能賞の「該当者なし」は可能な限り避けて頂きたい。

敢闘精神なき力士しか勝ち越さなかった。
全ての勝ち越し力士の中に顕彰に値する技能は無かった。

敢闘賞と技能賞の「該当者なし」とはそう言っているのと同じ意味であり、力士と観客の双方に失礼極まりないと思います。三賞の選考方法の改正を真剣に考えて頂きたいと切に願っております。


かなり残念だったのは蒼国来。
先場所と先々場所に感じた輝きはとうとう最後まで感じられませんで、序盤と中盤における4連敗×2回には首をひねるばかりの今場所でありました。

それと十一日目の琴勇輝が豊響に、十三日目の松鳳山が佐田の海に見舞った注文相撲。
琴勇輝も松鳳山も注文相撲なんてものをいさぎよしとしない力士だと思っていたのだけれども、裏切られたような感があります。押し相撲の力士が立合に注文を付けるのでは魅力半減どころではなく幻滅。注文相撲の善し悪しはさておき、私は大嫌い。

佐渡ヶ嶽親方や松ヶ根親方があんな相撲を許すわけもないと思うので更正を信じたいと思ってますが、しばらくは両力士への応援は控えることにします。


それにしても今場所は白鵬以外が星のつぶし合いを演じましたので、星勘定に依ることができず、総括の難しい場所であります。また、序盤から中盤にかけて、豪栄道を除く横綱大関陣が安定しておりましたので、その横綱大関という天井と元気の良い平幕からの突き上げに挟まれた関脇以下の幕内上位陣には受難の場所でありました。

関脇と小結は4人ともに負け越しましたので、春場所の番付では全取っ替えとなりかねないのですが、その下の勝ち越し力士というと照ノ富士が東前2で8-7、隠岐の海が東前6で9-6、佐田の海が西前8で9-6くらいなもの。

さー、どのように番付を編成するのかなーと妙な楽しみが生じてます。いやホント悩ましいと思う。


まとまりを欠いてしまいましたが強引にまとめてしまいますと、白鵬の全勝優勝による優勝記録更新という強烈な光に埋もれてしまいがちですが、平幕の相撲に白熱したものを感じられた、それでいて横綱や大関がそれぞれに責務を果たしたという、観ていて面白き場所でした。十五日間全てにおいての満員御礼に天覧相撲と、実り多き場所でもありました。この勢いのまま、大阪場所に突入して頂きたいものです。




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Comments (2)

  1. Маша(マーシャ)

    今場所の稀勢の里の「待った」はなかったんじゃないかな…。
    私の大雑把なメモでは 2日目の栃煌山戦で突っ掛けてますね。

    Reply
    1. 甚之介 (Post author)

      Машаさん、おはようございます♪

      今場所は十三日目まで全て深夜場所観戦でして「待った」の件も含めあまり見えてないのですよ。
      稀勢の里「待った」が無く1回で立てたのであれば、じんわり進歩でありますね。

      Reply

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