序盤戦を経て九州場所を占う

大相撲九州場所も早や序盤の五日間を終えました。
本日六日目からの中盤戦突入を前に、序盤を振り返りつつ場所を占ってみましょう。

閑古鳥が鳴くばかりか営巣していたんじゃないかと思うほどに観客の入りの悪いこれまでの九州場所でしたが、なんと初日に満員御礼となりました。実に17年ぶり。

閑古鳥駆除に成功した九州場所はテレビ桟敷にも伝わるほど館内の活気が満ちており、実によい雰囲気です。九州場所担当部長の松ヶ根親方(元大関若嶋津、鹿児島出身)も感慨深いものがあることでしょうね。

一方で、ケガによる休場が多い印象の強い九州場所でありまして、四日目に大砂嵐と嘉風が相次いで付き人の肩を借りるほどのケガをした際には、思わず目を覆ってしまいました。

1年納めの場所、誰しも勝ち越して番付を上げて新年を迎えたい、それゆえに無理をしがちなのかもしれませんし、気温の変化が激しくて体調維持が難しいのかもしれませんが、どうかこれ以上休場力士が増えませんようにと祈るばかりです。


では、入幕2場所目にして新関脇となった逸ノ城から。

対戦した5人のうち、4人まではバッチリ対策を立ててきましたね。
(しっかし碧山は無策にも程がある A^^;)

日馬富士は自らの真骨頂たる石火の立合で逸ノ城の立合の甘さを突きましたが、これは日馬富士だからできたこと。豪風は果たせなかった。
その日馬富士戦も、逸ノ城は両拳とも下せずで、行司や審判から待ったの声がかかってもよい立合でしたから、これは参考外かと。

それよりは四日目に豪栄道が見せた取口が教科書になるのではないでしょうか。

余裕で張り差しが成功するくらい立合が甘いですよ、皆さんも張ってはいかがですか?

差し手が入っても喜んで下手を深くしちゃダメですよ、アタマを付け、差した腕を返せば左上手は取られませんよ。

右はとにかく取らせちゃダメ。この右が自分の頭を抱えに来たら強引な投げの合図、ここがチャンスですよ。

と、豪栄道は懇切丁寧に教えてくれました。
右の相四つでこれだけのことができるのだから、左四つの役力士はまーさか負けないよねーw

ま、戯れはともかく、それでもたしかに逸ノ城は強いですから、
勝ち越すには勝ち越すんじゃないかと。あれ?世評より厳しいかな?A^^;


続いて休場明けの日馬富士についての考察。

思っていたよりも体が動けているので、星勘定ほどには心配しないでよいのかも。

元より金星配給の多い横綱ですから、序盤で2日連続の金星配給に周囲が騒がしいばかりですけれども、稽古不足で相撲勘が狂いを生じているだけだから気にすんなと言いたい。

体力面で保てれば…の但し付きではありますけれども、役力士総当り戦が始まる前には相撲勘も取り戻せるでしょうし、相撲勘さえ取り戻せば、優勝戦線をひっかきまわす役どころは果たせるかと。

3横綱の土俵入りの中では日馬富士が格別だとしている私としては、横綱として堂々たる相撲内容と成績で九州場所を無事に終えてほしいと願うばかりであります。

ところで時間いっぱい最後の仕切りで平蜘蛛をやりませんね。
私はあえてやらないのだと思ってます。で、ここ一番の取組におけるターボチャージャー(もちろん精神的な)として平蜘蛛をやるんじゃないでしょうか?


日馬富士に触れましたから、他の2横綱にも触れておきましょうか。
でも、白鵬と鶴竜は良くも悪くも変わりませんで、とくに相撲内容については横綱らしく7~8分の力で勝ち続けており、何ら述べるところがありません。

なので、他の面について述べておきましょう。

懸賞束を振り回すような仕草であるとか、汗を拭かないことであるとか、所作についての批判は白鵬の耳にも届いているものと思うのですが、序盤を観た限りでは全く改めるつもりは無いみたいですね。

戦績抜群、休場することのない横綱としてリスペクトされているだけに、まさしく玉に瑕な所作で残念です。今場所も貼り紙が要るのでしょうね。

鶴竜ですが、土俵入りが手旗信号の域を脱しつつあるように思えます。タメや間らしきものが、たまに入るようになりましたのでね。大丈夫、1年間は文句を言わずに成長を見守ります。頑張れ雲竜型。


さて、贔屓の稀勢の里、行きましょうか。

序盤を振り返ってみますと、初日から4連勝もまだまだ相撲が甘いように思えます。両足立ちで腰の立つ立合が三番もありましたし、照ノ富士にも善戦を許しました。そして碧山…

ただ、観る側にあわやと思わせる場面においても、身体反応、とくに足運びがよろしくて本人は慌てておりませんし、長い相撲となった照ノ富士戦でも息を弾ませることさえしませんでしたから、本人は相当な自信を持って土俵に臨んでいる感じは受けますね。

技術的には左おっつけが復活している点が大きいですね。その力の起点である右足の親指が完全回復した証かと思ってます。これで左おっつけ右ハズの押し相撲と左差し右上手の四つ相撲の二面性が高いレベルで維持できることになりますから、今場所は楽しめると思ってます。

あ、碧山戦のようなポカという計算外のことやりますから、星勘定は中盤を終えた時点でね。A^^;


稀勢を語ったので、他の2大関についても。

まず、ご当地の琴奨菊ですが、先場所に引き続き、速攻に命を預けた相撲を取り続けてます。
よくまぁあのヒザで相撲を取れるものだと感心するほかないのですが、やはり横に振られたときの脆さは先場所より増してますね。黒星先行でちょいと心配な序盤であります。

豪栄道は、まだ大関の地位に不慣れな様子で、初日二日目とバタバタした相撲で墓穴を掘りましたけれども、先場所に不覚を取った逸ノ城に完勝したことで落ち着きを取り戻してくれたら、意外と星を伸ばすのではないかと思ってます。

力が認められたからこそ大関になったわけでしてね。
心技体のうち技と体は整っているように見えるので、あとは”心”次第かと。


贔屓どころで高安を語っておきましょうか。

先場所、先々場所では四つ相撲に真価を発揮しつつあった高安が、今場所は”回転の良い突っ張り”という昭和のセピア色した立合からの攻めを嘉風戦と日馬富士戦で披露し、四つ相撲に専念すればいいのにーとしてきた私も、思わず顔がニンマリしてしまいましたよ。師匠譲りですかね?

ハワイ勢が先鞭を付けて、千代大海が確立させた感のある、射程距離が長くて一発一発が重みのあるドーンドーンという突っ張りばかりとなって久しく、回転を効かせてダダダダダダダダと連打する突っ張りは寺尾が最後でしたかね?

こういう温故知新な技術の復興は大好きでしてね。
下からのあてがいを回転に同期させつつ両差しに組み止めるという対抗策も廃れて久しいものがありますし、使い手が増えるまでは有効じゃないかなぁ。

今場所あと何回お目にかかれるか、楽しみにしております。


宝富士がいい。とてもいい。
幕内上位の良心的存在になりつつあります。

とにかく左差し右上手の左四つ。これしかない。この形を磨くことだけに専念し、ジワリジワリと力を付けてきました。

誰もが宝富士の立合は左差しだと分かっているのに相手力士が左を差される。
この現象は、相手によって取口を変えろと言わんばかりの解説が多い昨今、自分の相撲の形の大切さというものがどういうものなのかを教示していると思います。


レジェンド旭天鵬が初日から4連勝と元気元気。なにこの40歳、若すぎるww
4日目に通算出場1800回到達、通算900勝と幕内通算出場1400回に王手というけれども、相撲内容がちっともベテランらしからぬ力強さに溢れてるんですよね。すごいわこの方。


その旭天鵬に土を付けたのが蒼国来。こちらも4勝1敗と元気。
妙義龍に一方的に押し出された黒星を除けば、相撲内容がとてもよいです。
差し、おっつけ、喉輪、投げ、寄り、出し投げ、掬いと技を小気味よく先手先手で繰り出す理詰めの相撲がとても楽しい。

昨日の旭天鵬戦では実況に「やはり左四つでは蒼国来」と言わせたので、そろそろ公式プロフィールの「得意技:右四つ」は改めた方がよろしいかと。A^^;


今場所は久々に心より楽しめてます。
中盤戦も大いに盛り上がりましょう。




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