驚嘆すべき蒼国来の完全復活

夏場所初日に遡ります。5場所ぶり幕内に復帰した蒼国来をライブ放送で観ての話。

「あれ?蒼国来?」「なんか大きくね?」見違えました。
そして「増量に活路を見出したか。それは安易だな。」と思いました。
が、その心配は良い方向に大きく裏切られたのでした。


私の持つ蒼国来のイメージは、平凡な体、左下手を命綱として頭を付ける地味な相撲の形、これらを勝負勘でカバーしつつしぶとい相撲を取って、気がつけば9-6か8-7で勝ち越す、負け越しても7-8か6-9と大負けはしない、そんな力士です。

上手を引きつけて寄っていく相撲、あるいは突き押し相撲であるなら増量は武器になるかもしれないけれど、下手相撲が増量しても技のキレと持久力を奪うだけの結果となる例を幾多も見てきましたから、蒼国来も同じ道を辿らなければいいけどなぁくらいの気持ちで観ていたものです。

そんなわけでノーマークだった蒼国来ですが、目を見張ったのは八日目の豊響戦から。
あの平成の猛牛に立合勝ちして突進を止めるわ、上手をガッチリ引きつけて寄り立てるわ、そのあげく上手投げで勝利。目を疑いました。

さらに十日目。大きな隠岐の海の寄りを左下手投げで抵抗して投げ勝ったものの物言いが付いて同体取直し。これまでのイメージでは体力に劣る蒼国来が取直しでは圧倒的に不利…のはずが、隠岐の海の寄りを残しつつ廻り込んでの下手投げで這わせて涼しい顔。

そして昨日の高安戦。高安に頭を付けられる形で押されていったら、これまでの蒼国来ならあまり抵抗なく土俵下へ落ちていったのに、グッと踏みとどまっての強烈な左突き落とし一閃で高安を這わせました。

これは事件ですわ。どエライことです。


だってね。童顔の蒼国来だけれども30歳ですよ。体が大きくなって強くなるような年齢じゃなくて、フツーなら年齢的に故障がちになるヒザの負担を少なくするために体重は増やさないように管理し始める年齢ですよ。

それが130kg⇒142kgと大きく増量してパワーアップだなんて、いったいどういうことなのでしょうか?

考えれば考えるほど謎ではあるのですが、その理由はこれしかないように思えます。

悪い条件を全てひっくり返して良い条件とした。
(エースをねらえ!だったような気がします)

蒼国来にとっての悪い条件とは言わずもがな、2011年の幻の大阪場所から冤罪による解雇処分、そして解雇無効判決を経て2013年名古屋場所で復帰するまでの2年余り(14場所)もの大ブランクのこと。

復帰した当初、周囲からは、相撲勘が失われているであろうこと、体重と体力の減少による故障や大ケガの心配など、力士として油が乗りきっているはずの20代後半という貴重な時間を喪失したことによるありとあらゆる不安材料が囁かれたものです。

実際にも復帰後は、西前頭15枚目で6勝9敗⇒東十両筆頭で4勝11敗⇒西十両7枚目で5勝10敗と、落日の如く番付を落としてゆき、今年の初場所は東十両11枚目と幕下が見える位置まで下がってしまいましたから、このまま引退か?という記事さえあったくらいでした。

しかし、初場所を8勝7敗として復帰後初の勝ち越しを飾って踏み留まると、先場所の大阪では東十両9枚目で11勝4敗の十両優勝次点となり、幕内下位総崩れの恩恵もあって西前頭15枚目に再入幕して迎えた今場所なのでした。

大ブランクにより、知名度を得て多くの人に応援してもらえるようになった。

大ブランクにより、相撲や相撲界を外から見つめ直して自分の相撲を再構築できた。

大ブランクにより、ラグビー等の他のスポーツのトレーニング方法を知った。

大ブランクによって絞られた体に、体重と体力を乗せ直すことで、解雇処分前よりも大きて強い体を手に入れることができた。

といった具合に、誰がどう考えても悪い条件である大ブランクを、全てひっくり返して良い条件とした、それしか考えられません。

それもこれも、2年余りもの長い間、蒼国来が大相撲への情熱を失わずに土俵復帰を目指して出来得る限りの努力を続けていたがゆえに可能にできた奇跡であり、驚嘆に値します。

もしも(と言うかその可能性は高いのですが)蒼国来が解雇処分を受ける前も含めて自身初となる二桁勝ち星を挙げたならば、敢闘賞を授与することで讃えてあげてほしいと切に願います。


あらためまして、おかえりなさいませ蒼国来関。




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