よろしくない木刀

毎週木曜日は形稽古をしているのですが、ここ数年、よろしくない木刀を多く見るようになり、少々困惑しております。

私が「よろしくない木刀」と申しますのは、
1)座礼時に床へ置いた木刀が静定せずに転がる
2)物打ちが存在しない
といった感じの木刀でして、形を習い始める小中学生が初めて買い求めた木刀に、上記2点のどちらか、または両方が当てはまるものが近年よく見掛けるのです。


まず、1の「座礼時に床へ置いた木刀が静定せずに転がる」という現象ですが、これは鍔(つば)の形が原因です。

木刀の鍔(つば)

木刀の鍔(つば)

木刀に使用する鍔には縁(ふち)に凹みが4か所あり、座礼時に自分の右脇の床へ木刀を置くときは、刃部を下にした際のななめ右下の凹みを使うことで、刃部を自分側ななめ下に向けて置く形に静定します。

ところが、鍔の縁の凹みが浅く小さいため、置いた木刀が静定せずに転がり、刃部が真横を向いた形でグラグラ揺れ続けることになってしまう木刀が、近年は多いのです。

実のところ、普段から使用している竹刀の鍔は丸いので、座礼の際に竹刀が転がらないよう注意して床に置くことに慣れている小中学生は、刃部を自分側に向けることだけ気を付けてくれたならば困らないのですが、鍔の凹みが単なるお飾りになってしまうのは、指導する側としてはちょいと困るし戸惑うのです。


続いて、2の「物打ちが存在しない」木刀について説明します。

竹刀では、中結と剣先の間を物打ちとしてますが、刀にも物打ちは物理的に存在します。それは、掌を通して柄に伝えられた膂力+腕力が最も無駄なく効率的に刃部へと伝えるための作用点です。

言葉では伝わらないので、指導の中ではこのように説明します。

木刀を、左の人差し指の上に柄頭、右の人差し指の上に刀の真ん中あたり、下の写真のような感じで置き、ここから、右の人差し指を写真の矢印方向(剣先方向)に移動させますと……

木刀の物打ちを確かめる方法(1/2)

木刀の物打ちを確かめる方法(1/2)

右人差し指が剣先近くまで移動するや、寝ていた刀が勝手に立つのです。

木刀の物打ちを確かめる方法(2/2)

木刀の物打ちを確かめる方法(2/2)

これは、刃筋正しく斬るために設計された重心配分および反りによって起きる現象であり、刀が立った点の周辺から剣先までが物打ちということになります。

これを見せると小中学生の理解が深まりますので、ぜひ指導の際には実演してください。
なお、これは9年ほど前の剣道指導者講習会でご教示を頂いた内容の受け売りですけどね。A^^;

ところが、これをやっても、右人差し指が剣先まで到達しても寝たままの木刀があるのですから驚きます。(先述した鍔ほどには多く見掛けませんが)
重心配分が悪いのか、反りが足りないか、またはその両方が原因なのでしょうが、そのような木刀はやはり振り心地も振り納まりも悪いのです。


というわけで、剣道具メーカーさんも小売店さんも、初心者用と言えどもう少しマシな木刀をお願いします。

また、木刀を買う側の皆様も、上記2点は簡単に確認できますので、確認された上でのお買い求めを強くお勧めします。




今回の記事がご参考になりましたら応援クリックをお願いします。
にほんブログ村 格闘技ブログ 剣道へ

Leave a Comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください