剣道の試合での応援について考えた
剣道の試合での応援って、なんで拍手なのでしょうね?
昨年は韓国で開催されたWKC(世界剣道選手権大会)ですが、ここでの応援風景はあまりにも日本のそれとかけ離れてます。
拍手は日本でもありますが、それに加えて声援に指笛にブーイング。
それに対し、当然のことながら「剣道の応援は基本的に拍手だけなのに」という声が数え切れないほど上がりました。
しかし、今日になって「はて?」と思いましたよ。
拍手ってのはそもそも西洋由来のものであり、少なくとも剣道の元となった剣術の時代=江戸時代には無かったはずでは?
明治以前の日本には大勢の観衆が少数の人に拍手で反応するといった習慣はなく、雅楽、能(猿楽)、狂言、歌舞伎などの観客は拍手しなかった。明治時代になり西洋人が音楽会や観劇のあと「マナー」として拍手しているのに倣い、拍手の習慣が広まったものと推測される。1906年(明治39年)に発表された夏目漱石の小説『坊っちゃん』には「(坊ちゃんが)教場へ出ると生徒は拍手をもってむかえた」との記述がある。
まー、もしかしたら剣道が成立した大正時代あたりになると拍手という感情表現が日本にも定着していたのかもしれませんが、剣術から剣道へ、殺人刀から活人剣へと移行したとはいえども、相手を打ち据える行為に対して拍手で讃えるということが、剣道の創成期から是とされていたとは思えないのですよ。
逆に、池波正太郎先生が作中で
(道場破りに来た大久保という男を大治郎が返り討ちにした後のシチュエーション)
大久保について来た鵜飼道場の男たちが、こそこそと引き上げて行く。
しばらくは声もなく、感嘆の視線を大治郎へあつめていた三浦道場の人びとの歓声があがったのは、大久保兵蔵の姿が道場から消えてのちである。それだけ、この道場の人びとは敵に対する慎みをもっていたといえよう。(池波正太郎「剣客商売・白い鬼」三冬の縁談より引用)
などというシーンをよく書かれるのですが、こちらの方にリアリティを感じるのですよね。
もちろんフィクションですから歴史考証として正しいとは限りませんけどね。
そう考えますと、ブーイングは相手を貶めるものだからNGとするにしても、拍手は良いけれども声援や指笛や鳴り物はダメだとする論拠を失いやしないでしょうか?
拍手ならば良いというわけではないでしょう。
相手が反則を犯した時の拍手は相手を十分に貶めるものです。
味方の一本に満たない打突に対して集団的拍手を継続する行為は、審判に旗を強要する結果になりかねません。
何の脈絡もなく拍手が起きた?と思ったら、よくよく観察してみればラスト1分の合図だった なんてこともあります。
要は、応援方法よりも、機会=タイミング。
応援の内容や試合への影響こそ考えるべきなのでしょう。
私は主に小中学生の試合を審判することが多いのですが、とくに初心者に対しては拍手だけではなく、励ましやアドバイス的な声援を大いに与えてほしいですね。
あの10m四方の試合場に1人で立って闘うってのは、そりゃもう大緊張するものですよ。そして怖いものです。審判しているこちらまで心臓のドキドキが聞こえてきそうな顔が面ガネの下に垣間見えますよ。
なかには「キンチョーしなかった!」「怖くなかった!」という子もいますが、そういう子は逆に昂ぶり過ぎて自分が見えてないだけだったりします。A^^;
そんな初心者を後押しするような声援が、試合を良いものにします。
ただし、準決勝や決勝まで進むような選手はその域を出てますから、その点は周囲の大人が自制なさればよいと思います。
さて、高校生以上の公式試合での応援は、今のままでいいのでしょうか?
その応援風景を是として、WKCの観客に論理的な説明ができるでしょうか?
私は否だと思います。
まずは、拍手はOKで声援はNGといった方法論ではなく、外部からの試合への影響排除を目的とした応援機会の制限が必要でしょう。
試合の計時が止まっているときのみを応援可とし、試合開始や再開を告げる主審の「はじめ!」は応援が止んでからとする。
ここさえしっかり守っていれば、拍手でも歓声でもよろしいという考えもアリだと思うのです。もちろん、コーチングの防止などの措置は必要でしょうけれども。
以上、旧ブログ記事の焼き直しでした。
皆様はいかがお考えですか?
何時ぞや
選手権観覧ご一緒した時に
甚ノ介さんに
『なんで拍手しているんですか?』って
お聞きした事を思い出します
‥ん 前もコメントしたか??(苦笑)
個人的な感想として、
剣道を観るというのは観覧なのかなぁと。
競技の勝敗を楽しむというよりかは
競技の顛末を見守るっていう会場の雰囲気なのか…。
柔道は怒号が上がるからな…(爆)
> 競技の勝敗を楽しむというよりかは
> 競技の顛末を見守るっていう会場の雰囲気なのか…。
あ、それです。
勝敗だけで楽しめるならジャンケンでも良いのでしょうが、やはり勝敗への過程が面白い。
それは剣道だけじゃなくて他の競技も同じだと思うのですが、剣道はその度合が強いですね。
合議中や相手が防具の紐や竹刀を直してるときとかに監督が選手に指示などを出すのはいいんでしょうかね?
木村ナオキさん、コメントありがとうございます。
3ヶ月もの遅レスで申し訳ございません。
>監督が選手に指示などを出すのはいいんでしょうかね?
全日本剣道連盟剣道試合審判規則および同細則に付録されている剣道試合・審判運営要領の『その他要領』⇒試合者要領8項に、
> 8.監督・試合者は選手席への
> 時計の持ち込み、サインなど
> による指示や試合者への声援
> をしてはならない。
と明記されておりますから、良いか否かと問われるならばダメです。
ただし、試合審判規則の反則行為ではないため、審判や大会運営より注意することは可能ですが、罰則はありません。
よって、先週行われていた玉龍旗などは厳しく注意されますが、多くの大会では見過ごされているというのが現実だと思います。
試合審判規則に準ずる公式要領に明記されている以上は遵守すべきですね。