型と自在性

今場所(平成28年九州)の稀勢の里を例にして型と自在性の話をしてみます。
あ、剣道家視点になります旨、お許しを願います。(そーゆーブログですw)

大相撲、とくに役力士には相撲の型が求められます。稀勢の里に求められている型は左四つの相撲。左を差して右上手横褌を引いたときの稀勢の里は当代一の強さを発揮します。

ただし、鋭さに欠ける立合なので、千代の富士のように立合すぐに右で前褌を取り、引き起こして左上手ガッチリ…というような素人目にも分かりやすい型にはなり得ません。

なので、右で張って左を差す、突き起こして左を差す、相手の差し手をおっつけて崩してから左を差すといった前工程を経て左四つに組み止めるという相撲の型が稀勢の里に求められてます。

この相撲の型がうまくハマれば今年(平成28年)の春場所や夏場所のような安定感が生じ、格下相手に不覚を取るようなことは起きないわけですが、相手が横綱や大関となりますとそうは問屋が卸しません。

「型にハマる」という言葉が一般的に良い意味では使われないことからも分かりますが、型という必勝パターンはワンパターンでもあるわけです。

千代の富士のような角界一の鋭さがあるのなら話は別ですが、稀勢の里は左差しを得るまでの工程が長いので確度の高い取口予測が成立し、その中から勝機を見出すことは充分に可能。そこを突かれて優勝を逃した今年の春場所と夏場所でした。

ところが今場所の稀勢の里は自在性を発揮してます。
七日目の正代戦で左差しにこだわって墓穴を掘ったのは旧態依然の姿でしたが、九日目からは綱取りの豪栄道、優勝記録保持者の白鵬、唯一の土つかずだった鶴竜、年間最多勝を争っている日馬富士と、今場所の主役たちをいずれも左四つにこだわらない相撲で撃破してます。

では、稀勢の里が左四つの型を捨てて自在性を得たのかと問われるならば、その答えは否です。
相手が左差しを警戒することを利用して常に先を読み、突き押し、おっつけ、ハズ押し等を駆使して相手を揺さぶる中で、左差し右上手を得ることなく勝負が着いただけのこと。左四つの型は取組における相撲の流れの根底と相手力士の脳裏にハッキリと存在しているがゆえの稀勢の里の自在性なのでありましょう。

つまり、型と自在性は相反するものではなく、表裏一体のものなのです。

また、「型と自在性」を「基本と応用」と捉えて頂けるなら、相撲以外にも通じる話でもあります。もちろん剣道にも。

でも型と基本は似て異なるものですよ…という話はまた別の機会にて。




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