剣道はスポーツです
正しくは「剣道競技はスポーツです」と言うべきなのでしょうが、全日本剣道選手権大会優勝者が剣道日本一と称されるように、世間一般の認識における「剣道」とは「剣道競技」を指す言葉ですから、「剣道はスポーツです」でも誤りではないと思います。
本日から仕事始め。
昨日までの年始休暇がわりと日数あったので、このような記事を書いてみたわけですが、剣道部の皆様には、記事タイトルに「え?」と思われた方も少なからずおられるでしょう。
過去記事にてスポーツの武道化、武道のスポーツ化を憂慮する旨を書いたことのある私ですが、考えを少し改めることにしたのです。
あ、少しですよ。少し。A^^;
昨年秋、茨城県剣道道場連盟主催による茨城県剣道少年団研修会が日立市十王で開催されました。
この研修会は、剣道を通じて体験したことの作文を募集し、入選者がその作文内容を檀上発表するというもので、毎年開催されてます。
私も、教え子2名が登壇することになったので参加してきました。
教え子2名も含め、いずれの参加者も立派なスピーチを披露しましたし、小中学生視点による発表内容には毎年気付かされることが多く、とても勉強になるのですが、その中で「剣道は単なるスポーツではない」といった類の言葉が毎年何名かの登壇者から発せられ、その度、うーん、いかがなものか?と思うのです。
昭和育ちの私ですので、今の小中学生以上に「剣道は単なるスポーツではない」を耳にしてきましたから、言いたいことも、それが大人からの受け売りであることも分かるのです。
つまるところ、「剣道は剣の理法の修錬による人間形成の道」であるから試合で勝つことを目的にしないとする、剣道に携わる者としての矜持を表す言葉なのでしょう。
その矜持は大切なものですし、立派なものでもあるのですが、「剣道は単なるスポーツではない」という言葉にはスポーツを上から目線で見下している姿勢も表れてしまってますよね。
剣道界で発せられた言葉が剣道界の中だけに留まっていた昭和の昔ならともかく、このとおり個人意見もブログやSNSで世界中に発信できてしまう現在ですから、剣道人の何十倍も存在するスポーツ人の気持ちを害しかねない言葉を使うのは差し控えるべきだと思うのです。
また、そもそもスポーツの定義を誤っているからこその言葉でもあります。
スポーツとは、統一された公正なルールの下で勝敗を決する競技のこと全般を指しますので、全日本剣道連盟試合審判規則および同細則の下で試合が実施される剣道は、当然にしてスポーツに含まれるのです。
剣道の場合、そこに武道性が加わることによって、試合やその勝敗の持つ価値、評価、意味合いといったものが、多くの他のスポーツとは異なる個性を持っているだけの話。
ただ、その個性も剣道だけが持つものではなく、全てのスポーツはそれぞれに、試合やその勝敗の持つ価値、評価、意味合いは異なるものであり、それが各スポーツの個性に直結しているのです。
つまり「単なるスポーツ」なるスポーツなど存在しないのです。
結論、剣道は武道を本分とするスポーツなのです。
かく言う私も、前述しましたように、かつてはスポーツの武道化、武道のスポーツ化を憂いておりました。
しかしながら、スポーツの定義は年々変化しており、それに含まれる範囲も拡大傾向にあります。
文部科学省からスポーツ庁が独立し、日本体育協会が日本スポーツ協会と改称し、eスポーツやマインドスポーツへの理解が拡がりつつあるのも、その一環でしょう。
そんな中、剣道が競技性を保持したままに「スポーツではない」と強弁するのは時代に逆行するものです。このままではいつの日か、スポーツ性を廃して武道に特化するか、武道性を廃して高度競技化するかの二者択一を迫られることになるでしょう。
前者を選べば今の隆盛は維持できず、後者を選べば剣道の魅力が著しく損なわれます。いずれにしても剣道は衰退してしまいます。
それよりは、剣道のスポーツ的側面を真正面から認めつつ、その競技性と武道性の両立を維持する方向性を確立したいものです。
皆様はいかがお考えになりますか?