退位と譲位
退位と譲位は似て異なる言葉です。
このところの皇位継承に関する議論および記事における「退位」という言葉は、本来であれば「譲位」という言葉が充てられるべきではないかと思うのです。
私は国語学者ではありませんし、言葉に対して義務教育以上の教養があるというわけでもないので、認識に誤りがあるかもしれないことは承知の上で述べてみます。
「譲位」は「今上天皇陛下が皇太子殿下に皇位をお譲りになる」と素直に読めます。皇位継承に相応しい言葉だと思います。
対して、「退位」では「今上天皇が皇位をお退きになる」に留まりますし、退任・退場・退社・退役・退任・退陣…といった語群と同様に、「退く」という言葉に何らかの外圧を感じさせられます。
実際は皇室典範に従って皇位継承されるにせよ、天皇が天の皇(あまのすめらぎ=他に並び立つ者の無い天辺の位)である以上は、天意による皇位継承(現代天皇の崩御⇒皇太子が次代天皇に即位)以外の方法は、天皇の意思による譲位しかありえません。
皇室会議であろうが、有識者会議であろうが、国家主権者たる国民であろうが、天意または天皇自らの意思以外の働きにより皇位が継承されてしまったならば、天皇を天皇と呼ぶことの根幹が崩れてしまいます。
「退位」という言葉はそんな状況へと強く誘引する言葉だと思うのですが、それでもまだ「退位」という言葉を今後何年も使うのでしょうか。
ましてや「生前退位」などと…
皇后陛下が感じられた違和感は広く共有されていると思うのですが、こちらも「譲位」という言葉を使えば「生前」などという不吉な言葉を加える必要はないのです。「お譲りになる」のは生前であることが前提ですからね。
やはり「退位」を用いるのは誤りであり、「譲位」を用いるべきです。
気になったので調べてみた。
退(しりぞく)
譲(ゆずりわたす)
天皇という位が個人の所有物であれば(世襲なので個人の所有に限りなく近いとは思うが、国民の総意に基づくのであれば個人のものでは無い)とすると、「退」というのも間違いでは無い、と。
後継者が決まってるとは言え、譲る先を自分では決められないでしょうし。
最初に報道したところにならってしまったのか「生前」はないなぁ。
「生前贈与」あたりが元なんでしょうけど。
tooさん、コメントありがとうございます。
>最初に報道したところにならってしまったのか「生前」はないなぁ。
ですよね。報道する側も根拠があってのことなのでしょうけど、躊躇するところは無かったのかなぁ。