Tag Archives: 剣道試合審判規則

物理判定と裁量判定

物理判定とは、物理的に測ることが可能な事象により判定することを指します。
裁量判定とは、物理的に測ることができない事象を審判員が与えられた裁量の範囲内で判定することを指します。
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30 6月 2016

産経記事への憂慮と「幻の一本」への私見

たしかに剣道の試合審判規則は分かりにくいものがあります。
しかし、実際のところ剣道の試合審判規則はよく出来ており、問題の多くは規則を運用する側にあると私は思っております。
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14 10月 2015

充実した気勢とは?

まず、全日本剣道連盟剣道試合審判規則の第12条をご参照頂きたいのですが、

第12条
有効打突は、充実した気勢、適正な姿勢をもって、竹刀の打突部で打突部位を刃筋正しく打突し、残心あるものとする。

全日本剣道連盟剣道試合・審判規則より引用~

上記のとおり、有効打突=1本と判定することの条件として充実した気勢の伴う打突であることが定められております。
さて、この充実した気勢とは具体的に何を指す言葉なのでしょうか?

大辞泉(goo辞書)によりますと、

き-せい【気勢】
何かしようと意気込んでいる気持ち。盛んな意気。

とありますから、試合審判規則第12条における充実した気勢とは「打突しようと意気込んでいる気持ち。盛んな意気。」ということになります。
しかし「気持ち」も「意気」も本来は内面的なものですよね。それを審判という第三者がどのような外形から判定しているのか? ということを選手は知らなければなりませんし、審判員もきっちり認識しておく必要があります。


打突のための気勢の充実を量る外形その1【気合】

まー、気勢の充実を示す最も手っ取り早い方法が気合、つまりは発声。
「ヤー!」と攻めて「メーン!」あるいは「コテー!」「ドー!」「ツキー!」などと打突部位を叫ぶ大音声のこと。

気勢を欠いた状態で、攻めや打突に気合を載せることは不可能ですよね。
それを逆説的に捉えれば、気合を載せた攻めと打突は「充実した気勢」を最も雄弁に示す外形であるということですから、審判はまず気合の有無をもって「充実した気勢」を量ってます。

少し話を脱線させますが、剣道をよくご存じではない方から「メンを打つのに『コテー!』と言ったら1本にならないの?」みたいなことを聞かれることがありますけれども、打突する際に打突部位を言わなければならないという試合審判規則はありません。

しかし、「コテー!」という発声で面を打った場合「コテを打とうとしたら偶然メンに当たった。つまりメンを打つための気勢を欠いている。」として1本と認めないとする判定もあり得ます。

まー、そもそも打突部位と異なる気合を載せたところで打突と気合は同時ですからフェイントにさえならないわけで、そんな無意味なことは誰もやらないというのが実情ですけどね。A^^;

なお、「後載せの気合」に旗が上がらないのは上記と同じ理由によるものです。つまり「偶然に当った打突に気合を載せただけであり、気勢に欠けている。」ということです。


打突のための気勢の充実を量る外形その2【攻めによる崩れ】

発声という意味での気合が無くとも「間合いを詰める」「剣先を制する」「打突気配を醸し出す」等といった”攻め”によって相手の驚懼疑惑(いわゆる四戒)を誘い、それが「守勢への転じ」「居着き」「剣先の乱れ」等といった相手の”崩れ”という外形となって現れることから、気勢の充実を量ることができます。

高段位の方が、若手がよく使う怪鳥のような耳をつんざく気合声を使うことなく「充実した気勢」を示しているのが正にこれであります。充実した気勢によって相手を制し、その証拠として相手の崩れたところを打つ、すなわち「勝って打つ」という剣理によるものです。

基本が完成していないレベル(具体的にいえば三段未満)の場合、攻めるまでもなく既に生じている相手の隙、あるいは相手の基本から外れた打突や体捌きにより生じた隙を、いかに早く見つけ、反応し、打突するかを競うばかり。すなわち「打って勝つ」という剣理なので、”攻め”による”崩れ”はハッキリとは外形に現れませんから、審判等の第三者は「充実した気勢」を気合で量るしか術がありません。


結論。充実した気勢とは、三段を取得するまでは大音声たる気合そのものを指します。
これに「相手を攻め崩すこと」が加わるのは三段取得後。

クールあるいはシャイを装って声を出さないでいては損するばかりなのですが、年々、小中学生剣士の気合が小さくなっている感があり、ちょいと心配している近頃なのです。

05 6月 2014