「スポーツ=体育」という誤解を正してほしい

今月に設置されたばかりのスポーツ庁の初代長官に鈴木大地氏が就任したかと思えば、第3次安倍改造内閣の文部科学大臣に馳浩氏が就任。

馳浩氏は元プロレスラーという印象が強いと思いますが、実はロス五輪のレスリング日本代表選手。鈴木大地氏は言わずと知れたソウル五輪の水泳・背泳ぎ金メダリスト。オリンピックシフトでありましょうかね。

元プロレスラーでマッチョなイメージの強い馳浩氏の文科相就任を訝しむ声もありますが、私は順当な選出だと思ってますし、期待もしております。
参院1期、衆院6期目で議員としてのキャリアに申し分ありませんし、文部科学大臣政務官、文部科学副大臣、自民党文部科学部会長などを務めてきて経験も充分。プロレスラーのイメージで彼を見ては見誤ることでしょう。

ぜひ、馳大臣&鈴木長官のオリンピアンコンビでスポーツ行政を刷新してほしいと思ってます。


ところで、私がオリンピアンコンビに望むのは、やれスポーツ庁を省に昇格させろとか、スポーツ支援を充実させろとか、そういう次元のものではありません。もっと根本的なところです。

日本は国全体で「スポーツ=体育」と誤解しておりますから、これを国全体のレベルで正すことこそがスポーツ行政刷新の初めの一歩。まず、これをなんとかしてほしいのですよ。

ナニ言ってんだ?「スポーツ=体育」で正しいじゃないか と思った人にお聞きしたい。

IOC(国際オリンピック委員会)が承認する世界最大のスポーツ組織であるスポーツアコードに、チェスや囲碁の国際競技団体(IF)が堂々と加盟していることはご存知でしょうか?

アジアオリンピック評議会が開催しているアジア室内競技大会にeスポーツ(コンピューターゲーム)が正式種目として採用されていることは?

これらに対して「えっ?」と疑問を持つ人が日本では大多数なのですよね。

しかし、マインドスポーツやeスポーツ、あるいはモータースポーツに対して「そもそもスポーツと言えるのか?」などという疑問が出てしまうのは、スポーツという西洋発祥の文化を正しく理解していないことの証左であり、大いなる誤解なのです。

スポーツとは、公正に定められたルールの下で勝敗を競うもの全てを指し、sports の語源が古フランス語の desport 「気晴らしをする、遊ぶ、楽しむ」であることからも分かるように、その本来の目的は昇華にあります。(昇華とは、反社会的な欲求や感情を、社会に文化的に還元出来得るような価値ある行動へと置き換えること)

体育は副次的な効果であって、スポーツの目的ではないのです。

ゆえに、体を動かさないチェス・囲碁・コンピューターゲームもスポーツであり、例えば「ジムで体を鍛える」などは競技性が無いのでスポーツには含まれません。

このように、日本全体が「スポーツ=体育」という誤解と無理解に包まれており、その誤解したスポーツ観の元に施されるスポーツ行政が正しいわけないのです。

この「スポーツ=体育」という誤解こそが、日本がスポーツ大国にならんとしつつもなれず、生涯スポーツも普及せず、官民ともスポーツ支援に無理解であるといった、日本のスポーツにおける全ての問題点の根本原因であるとさえ言えます。

これを正さずにスポーツ庁を起点にしてスポーツ行政の刷新を図っても、スポーツの発展とそれによる国民の利益に直結するものにはならず、むしろ、より間違った方向へと導いてしまうに違いないと、私は思うのです。

また、このことは武道のスポーツ化という問題にも深く関与しており、私達剣道家にとっても無視できないものでもあります。

さて、オリンピアンコンビからこのあたりの話を伺うことは出来るでしょうか?
お二方の資質うんぬんの前に、日本の現状を考えますと、無理かな~? と思いつつも、期待したいと思います。




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Comments (3)

  1. りっきー

    先日、NHKの番組でこの辺の話をしており参考程度に紹介します。そもそも体育とは何でしょうという話がでていまして、元々は、軍事教練としての身体強化が元々の体育だったそうです。その流れののまま教師の言うままに体を動かすにようなってしまっています。うーん楽しくないですね^^;この番組には鈴木大臣(大臣になる前の週の出演)もおられました。体育=スポーツではない発言も有りましたので甚之助さんの言うように体育とスポーツの違いをきちんと発信していただけるのではないかと期待してみたいと思います。

    Reply
    1. 甚之介 (Post author)

      コメントありがとうございます♪

      おー、鈴木長官、期待できそうですね。
      考えてみれば、国際的に活躍したトップアスリートなら誰しも感じる矛盾点だと思いますし、壁にも感じられたのではないかと推察します。

      お題に挙げた「スポーツ=体育」という誤解を正した先には、知育と体育と徳育のうちの知育以外を学校教育から切り離し、そのための受け皿を他に作ることになろうかと思うのですが、それははるか先の話としまして、まずは「スポーツ=体育」という誤解をなんとかしてほしいと切望しております。

      体育教科と軍事教練の話は剣道モロ被りですね。この件は別のネタとして後日に書ければと思ってます。

      Reply
  2. Pingback: 体育⇒スポーツ、名称変更だけ? | 甚之介の剣道雑記帳2

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