合気の立合を望みます

Twitterには投下済みなのですが、初場所が始まる前に立合問題について述べておきたいと思います。

横綱たる白鵬が、張り差しやかち上げを立合に多用することが批判されており、中には立合での張り手やかち上げを禁じ手(反則)にしようなどという意見さえも散見しますが、個人的な好き嫌いは別にして、張り差しもかち上げも立派な技芸であり、これを封印せしめるようなルール変更は大相撲をつまらないものにすることはあっても面白くはしないでしょう。

立合に関する諸問題の根幹は「立合の合気外し」に尽きます。


立合の張り差しやかち上げ、これに変化も加えてよいかと思いますが、これらによって淡白な相撲内容となってしまうというのは事象例に過ぎません。

合気が外されたところを張られるから相手十分の差し手を与えてしまう。
合気が外されたところにエルボー気味のかち上げを食らうから腰砕けになる。
合気が外されたところに変化を食らうからパタリと簡単に落ちる。
それだけのことです。

これを言うと「合気を外される方が悪い」とか「合気外しも高等テクニック」といった意見も聞こえてくるのですが、おそらくは立合=相撲の競技開始方法についての認識が私とは異なるのでしょう。

まずはその点の共通認識を得ないことには議論にさえなりませんので、くどいように思われるかもしれませんが、立合そのものについて述べさせて頂きます。


私の守備範囲である剣道もそうですが、格闘技系競技の競技開始は審判や時計係といった第三者に委ねられる場合がほとんどです。

しかし、大相撲の場合、対戦する力士双方の暗黙の合意、すなわち阿吽の呼吸で競技開始=立ち合うことになっております。

この競技開始方法は、力士双方がお互いに滅し合う敵対関係にあるのではなく、五穀豊穣を願って神に力の奉納をするための協力関係にあることの証左であり、大相撲の文化的価値を構成する要素の中でも最重要に部類されるべきものです。

力士双方の合気なしには「暗黙の合意」も「阿吽の呼吸」も成立しません。
すなわち「立合の合気外し」は暗黙の合意を破る不誠実かつ不公正な行為であり、間違っても褒められることではないのです。


では、「立合の合気外し」が白鵬固有の問題かといえば、それは大きな誤りです。
白鵬の「立合の合気外し」が抜群に上手く、成功率も高いため、悪目立ちしているだけのこと。

立合が審判長や行司に止められずに成立する範囲内で可能な限りの「立合の合気外し」を得んとするための駆け引きは珍しくありません。駆け引き下手な一部関取を除く大多数の関取が「立合の合気外し」を常態化させているのが現状です。

また、これは現在の大相撲固有の問題ではなく、初代若乃花の二子山理事長が「待った」に罰金を科した昭和の昔から存在し、ほとんど良化していない問題でもあります。

それを白鵬の個人批判に置き換えてしまうのは問題を過小評価しているか、白鵬を批判するための批判であると言わざる得ないでしょう。


たとえ白鵬1人が立合を改めたとて解決する問題ではありませんし、今の様子では「張り差しやかち上げをしなければ良いんだな?」とばかりに、なお一層の「立合の合気外し」に精進しかねません。それでは何の解決にも改善にもならないどころか事態は悪化の一途を辿ります。

日本相撲協会が審判部を通じて立合を厳正に指導し、全力士を対象に取り締まらねばダメなのです。

合気の立合を得るために何回も仕切るのですが、ほとんど形骸化しており、時間前に合気を得て立つ力士など今はおりません。

合気の立合を得るために、というよりは合気外しの時間幅を狭めるために、力士双方が両拳を着いて立つことが求められておりますが、張り差し常習者の張る側の手はそのほとんどが着き手不十分です。

降ろす手を途中で止めて焦らす、降ろしかけた手を引き戻す…と見せて着く、といった着き手フェイントが常態化している力士も多数おります。

罰金制度の復活も視野に入れ、審判部がこういったことを厳しく取り締まるだけでも、張り差しやかち上げの難易度がグイっと上げられます。
これにより、奇襲としての張り差しや、相手の上体を浮かすためのかち上げは相撲の技芸として残しつつ、楽に勝つための張り差しや、相手にダメージを与えるためのかち上げは淘汰されることが期待できます。


しかしながら、審判部長であった若嶋津の二所ノ関が療養中で、小城ノ花の出羽海が2月の理事改選までの短期間を臨時に務める審判部長の下で開催されるこの初場所はそれが望めません。

観る側としては、マスコミのミスリードに煽られることなく、どのような立合が大相撲の今後を良くしていくのか?を観点に立合問題の根幹をよくよく見極めるべき初場所でありましょうね。


張り差しやかち上げの禁じ手化には明確に反対します。
立合における駆け引きの可能な限りの排除と、合気の立合の奨励を望みます。




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